キャンベルタウンの3つの蒸留所を紹介! 町の歴史についても解説
- ウイスキー蒸留所
スペイサイドはウイスキーの聖地とも呼ばれるスコッチウイスキーの製造が盛んな地域で、スコットランド北部にあるハイランド地方中心地のスぺイ川周辺地域に位置しており、スペイサイドはウイスキーの製造に非常に適した地域のため、蒸留所の多くがスペイサイドに集中しています。
そして何よりもスペイサイドの蒸留所で製造されるウイスキーは甘くて飲みやすく、初心者に勧めやすい名酒が多いのが特徴です。
この記事ではウイスキーの聖地であるスペイサイドの魅力と代表的な蒸留所についてご紹介をしていきますので、ぜひスペイサイド地域の魅力を楽しんでいただければと思います。
この記事のポイント
スコッチウイスキーの製造地は6種類に分類され、スペイサイド以外にはハイランド、ローランド、キャンベルタウン、アイラ、アイランズがあります。
上記の図ではスペイサイドはハイランド地方の中央に存在し、他の地域と比較して特別に大きい地域ではありませんが、多くの蒸留所がスペイサイドに集中しています。
また、スペイサイドで製造されたウイスキーには世界的に評価が高い銘柄が多く、中でもザ・マッカランや、グレンフィディックは知名度も高く、世界中の愛好家から愛されている銘柄です。
スペイサイドは正確にはハイランド地方の一部ですが、ウイスキーの製造地を分類する際にはスペイサイドとスペイサイド以外のハイランド地方に分けるのが一般的です。
そのため、スペイサイドがあるハイランド東部の蒸留所の分類は難しく、東ハイランド地方に存在するグレンドロナック蒸留所はスペイサイドに分類されることもあります。
東ハイランドにあってもスペイサイドウイスキーを名乗ることもできるので、スペイサイドとハイランドの地域分類は必ずしも厳密ではないことを理解しておきましょう。
上の写真はスペイサイドに流れるスぺイ川の風景です。
このような美しい自然風景があることもスペイサイドの魅力の1つではありますが、今回はウイスキーに関する魅力に絞って3つ解説します。
スペイサイドはウイスキーの原料である大麦の産地であり、スペイサイドに流れるスぺイ川の清流もウイスキーの製造には欠かせません。
スコットランドの主要な山脈であるグランピアン山脈がもたらす涼しい気候はウイスキーの熟成に最適です。
また、ウイスキーの製造過程において麦芽を乾燥させる必要がありますが、スコットランドの自然環境ではピート(泥炭)が発生しやすいため燃料に使用されます。
ピートで乾燥させたウイスキーは独特のスモーキーな香りが特徴であり、好き嫌いは分かれますが、スコッチウイスキー特有の香りとして愛好家から愛されてきました。
スペイサイドでは安価な燃料であるピートが簡単に入手できる環境であったこともウイスキーの製造が発展した理由のひとつになります。
ウイスキー製造に適した環境であることから蒸留所の多くがスペイサイドに集中しています。
蒸留所が集中した理由には、1700年~1800年頃までのウイスキーの密造時代があったことが挙げられます。
スコットランドが併合された際にイングランド政府が課した重い酒税から逃れるために、当時のウイスキーの製造業者の多くはスペイサイドを密造の拠点に選びました。
カスク(樽)による熟成が始まったのは、密造時代に熟成に使用した樽を再利用したことによる偶然の発見であったといわれています。
酒税法の改正とスペイサイドで初めての政府公認蒸留所であるグレンリベット蒸留所の設立によって、密造時代は終わりを迎えました。
このような背景もあり、スペイサイドには古来からウイスキーの製造業者が多く存在したのです。
そのため、スペイサイドウイスキーは他の地域のウイスキーと比較して蒸留所や銘柄の選択肢が広いことも魅力になります。
スペイサイドの蒸留所で製造されるウイスキーは甘くてクセが少なく飲みやすいウイスキーが多いことも特徴です。
フルーティーな甘みを持つ銘柄が多く、口当たりがよいため、アルコール度数が高いにも関わらず際限なく飲めてしまうように感じられるほど飲みやすいウイスキーが多くあります。
スコッチウイスキーは個性の強い銘柄が多く、アイラ島で生産されたアイラウイスキーは特有のスモーキーな香りが強いため、好き嫌いが非常に分かれやすいといわれています。
スペイサイドウイスキーはクセが少ないので万人受けしやすく、初心者におすすめしやすい銘柄が多いです。
よって、初めて飲むウイスキーをスペイサイドから選んだ人も多くいます。
スペイサイドにある代表的な蒸留所を16種類紹介します。
1824年に初めて政府公認となり、「すべてのシングルモルトはここから始まった」というキャッチフレーズでも知られているスペイサイドを代表する蒸留所の1つです。
麦芽を糖化させる際にはジョージ―の湧水と呼ばれる地下深くの水脈を源泉にした水を使用するこだわりがあります。
また、熟成の際には2種類の樽を組み合わせて熟成させるのが特徴です。
組み合わせを慎重に厳選し、それぞれの樽の良さが際立つように熟成させます。
ウイスキー密造時代の幕を引いたグレンリベット蒸留所は世界から評価されるウイスキーを製造し続けています。
グレンフィディック蒸留所はスペイサイドのダフタウン地区にある蒸留所です。
グレンフィディックはゲール語でシカの谷という意味であり、シカがラベルに印刷されています。
製造過程ごとに職人を常駐させているのが特徴であり、蒸留・熟成・ボトリングなどにさまざまなプロフェッショナルが関わっています。
また、グレンフィディック蒸留所の敷地内にあるロビーデューの湧き水もウイスキーの製造に欠かせません。
職人のこだわりがそのままウイスキーの味に反映され、伝統のある製法を守り続けている蒸留所になります。
2018年に新たな蒸留棟が完成したマッカラン蒸留所もスペイサイドを代表する蒸留所になります。
マッカランはスコッチウイスキーの中でも代表的な高級ウイスキーであるため、製法はもちろん原料に至るまでこだわりを感じられるものとなっています。
その中でも最も大きな特徴は蒸留に使用するポッドスチル(蒸留釜)であり、ポッドスチルの大きさはスペイサイドでも最小です。
小さいポッドスチルを使用するとアルコールの移動距離が短くなるので、より密度が高く、高級な蒸留酒のみを抽出できる仕組みとなります。
もちろん、製造コストは大きくなりますが、最高品質のシングルモルトを作るために一切の妥協を許さない姿勢がマッカラン蒸留所が世界に評価される理由といえるでしょう。
スコットランドのマレーに存在するグレングラント蒸留所はスペイサイド地域に分類されます。
前身はダンデライス蒸留所であり、第2の蒸留所であるキャパドニック蒸溜所も存在しましたが、2002年に閉鎖しました。
グレングラントは創業者のジェイムズ・グラントとジョン・グラントの兄弟の家名から名付けられています。
ポッドスチルの形を独自のストゥーパ型に変え、ピュアリファイヤー(精留器)を取り付けることによってライトで飲みやすいウイスキーに仕上がります。
ピート香の強いスコッチウイスキーよりもクセがなく飲みやすいウイスキーのほうが世界から受け入れられやすいといち早く考えたことで、現在のスペイサイドウイスキーの土台を作った蒸留所です。
蒸留所見学も開放しており、世界にウイスキーの魅力を伝える活動に積極的です。
グレンロセス蒸留所はスペイサイドのバーン・オブ・ロセス付近にある蒸留所です。
1878年に資金援助を受けていた地元銀行が倒産したことで建設計画が破綻しかけ、その後も度重なる火事の連続による不運が続きました。
しかし、グレンロセス蒸留所はこのような事態に陥っても、製造される原酒が高品質であることから現在も閉鎖することなく生き残っています。
1回の仕込みに使用する大麦は約5トンであり、ポッドスチルの大きさも他の蒸留所と比較して非常に大きいものを使用しています。
グレンロセス蒸留所の原酒は大半がブレンデッドウイスキーに使用されており、シングルモルトとして販売されている商品はほとんどありません。
ロングモーン蒸留所はスペイサイドのマレーにある蒸留所になります。ロングモーンはゲール語で聖人の地を指し、蒸留所建設前に教会があったことから付けられたと考えられています。
日本とも密接な関係を持つ蒸留所であり、ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝氏がスコッチウイスキーの伝統的な製法を学んだ場所です。
仕込み水はミルビュイズの泉を使用しており、古来の伝統的な製法を守るよりも製造方法を効率的なものに変遷させてきた蒸留所になります。
また、次に紹介するベンリアック蒸留所とは姉妹蒸留所であるため非常に近い場所にあります。マレーの地域には他にも蒸留所も存在しているので、スペイサイドでも蒸留所が集中している地域です。
マレーのエルギン町近郊に存在する蒸留所であり、ロングモーン蒸留所の創業者であるジョン・ダフがベンリアック蒸留所を創業しています。
ベンリアック(BenRiach)蒸留所のBenはゲール語で山を指しますが、蒸留所付近に山は存在せず、Riachの意味は不明であるため名前の由来が正確には分からない蒸留所です。
蒸溜所の設計はチャールズ・ドイグがおこない、伝統的な製法であるフロアモルティングを現在でもおこなっています。
フロアモルティングは床でモルティング(製麦)をおこなう製法であり、手間がかかりますが奥深い味わいに仕上がりやすいメリットがあります。
伝統的な製法を守り続けるベンリアック蒸留所と時代と共に製造方法を変遷させたロングモーン蒸留所は、姉妹蒸留所であってもその方針は対称的です。
グレンファークラス蒸留所はスペイサイドのバリンダロフにある蒸留所です。
1836年にロバート・ヘイにより設立され、ゲール語で緑の草原の谷間を意味します。
古来から続く蒸留所の運営は買収により経営者が変わっているケースが多いですが、グレンファークラス蒸留所は数少ない創業者の一族が経営している蒸留所です。
ザ・マッカランとは反対にスペイサイドエリアでも最大のポッドスチルを使用しているのが特徴になります。
これにより生産能力が非常に高まり、創業者一族による運営であっても大規模な蒸留所として知られています。
ラワー川沿いにあるカンタベリー大司教(当時は聖ダンススタン)の敷地内の井戸の周辺に設立された蒸留所でしたが、現在では火災で焼失し、1.5キロ離れた位置に再建されています。
1826年当時は密造酒であり、この井戸の神聖な水を仕込み水として使用していたという話もありました。
現在ではベンリネス山の中腹で湧き出る水を仕込み水として使用しています。
アベラワー蒸留所にはダブルカスクマチュレーションという製法を大事にしています。
ダブルカスクは2つの樽、マチュレーションは熟成であるため、シェリー樽とバーボン樽の2つの樽で熟成させることを指します。
バルヴェニー蒸留所はスペイサイドでも有名なグレンフィディック蒸留所の姉妹蒸留所です。
バルヴェニーはグレンフィディック蒸留所のあるダフタウンの古城の名前であり、ゲール語で山の麓の集落を指します。
原料はグレンフィディック蒸留所と同様のものを使用していますが、仕込み水をコンヴァル丘陵の数十の湧水を使用することで差別化を計っています。
姉妹蒸留所であるため共通点が多いですが、バルヴェニーとグレンフィディックは異なる風味を持ったウイスキーです。
ストラスアイラ蒸留所は1786年に設立されたスコットランドで最古の蒸留所です。
蒸留所の名前にはゲール語で谷を意味するグレンが使用されますが、ストラスは同じ谷を意味しますが、意味合いではストラスのほうが広い谷を指します。
アイラは蒸留所近くを流れているアイラ川を指すため、アイラ島やアイラウイスキーは関係ありません。
仕込み水にはブルームヒル・スプリングという貯水池の水を使用しており、その池にはケルピーという水の妖精が住んでいる伝説があるようです。
麦芽はノンピートで製造されているため、スコッチウイスキー特有のピート香はなく、ストラスアイラはフルーティーで甘みのあるスペイサイドらしいウイスキーとなっています。
グレンキースはスペイサイドの中でもキース区域にある蒸留所であり、ストラスアイラ蒸留所の第2蒸留所でもあります。
1957年に設立されましたが公式で初めて販売されたのは1994年であり、それまではボトラーズに原酒を買い取ってもらう形での販売でした。
1999年に一度閉鎖し2013年に再始動しており、他の蒸留所と比較すると短い歴史ですが、波乱のある歴史が続いています。
再始動時にはウォッシュバック6基を増設することで生産力の増加に力を入れています。
ダルユーイン蒸留所はマレーのキャロン村に存在する蒸留所です。1852年にウィリアム・マッケンジー氏により設立されました。
キャロン村は鉄道のない地域でしたが、ストラススぺイ鉄道が開通すると自前の蒸気機関車でウイスキーの原料を輸送することでウイスキーの製造を効率化させました。
仕込み水はバリームーリック川の清流を使用し、蒸留器はランタンヘッド型とストレートヘッド型を採用することで、甘くてアロマが香るフレーバーのモルトを生み出しています。
ダルユーインのシングルモルトはあまり知名度は高くありませんが、ブレンデッドウイスキー「ジョニー・ウォーカー」のキーモルトを製造している蒸留所として知られています。
鮭の釣り場として有名なスぺイ川の中流付近に存在する蒸留所です。
ダルユーイン蒸留所と同様にウイスキーの原料を鉄道で運んでおり、創業者のジョン・スミスは鉄道好きであったこともあり、初めてウイスキーに鉄道を利用した蒸留所として知られています。
ジョン・スミスは上部が平らで、ラインアームがT字であるポッドスチルも考案しており、この蒸留所では現在も使用しています。
この形はウイスキーの香りを複雑にさせ、ライトで繊細な酒質を作り出す計算された設計です。
クラガンモアもシングルモルトとして販売されることは少なく、庶民向けのウイスキーであるクレイモアのキーモルトとして使用されています。
タムデュー蒸留所はスペイサイドの中心部であるスぺイ川の北部に位置します。
ゲール語で黒い丘を意味するこの蒸留所は、1897年に設立され現在に至るまで3回の操業停止に陥りました。
モルティングの方法はサラディン式を採用し、大きな箱を用意し、床から空気を送りながら発芽させます。
フロアモルティングと比較すると効率的にモルティングができる方法です。
タムデューは生産力が高い蒸留所として知られており、一時期は全体のモルトの3割を製造していました。
ベンロマック蒸留所はスペイサイドの中でも最も小規模である蒸留所です。
現在ではボトラーズの中でも有名なゴードン&マクファイル社(G&M社)が所有しています。
一時期は蒸留所の施設が取り壊されましたがG&M社の尽力もあり再建され、チャールズ皇太子が公式な復活宣言をしたことにより、ベンロマック蒸留所は1998年から再開することができました。
フェノール値10~15ppmのライトピートモルトを使用し、現在では入手が難しいシェリー樽による熟成をおこなうことで、1950年代のスペイサイドウイスキーの再現を目指します。
規模が小さく閉鎖の危機に直面した蒸留所ではありますが、チャールズ皇太子のお墨付きもあり、現在では存在感の大きい蒸留所です。
蒸留所ごとの特徴について解説したところで、スペイサイドの資本成長率を他の地域と比較しながら見ていきましょう。
エリア | 2020年1月 | 2020年6月 | 2020年12月 |
スペイサイド | 11.55% | 11.74% | 10.05% |
ハイランド | 10.62% | 11.36% | 9.69% |
ローランド | 12.91% | 9.82% | 7.00% |
キャンベルタウン | 16.06% | 15.36% | 13.79% |
アイラ | 15.57% | 16.35% | 15.02% |
アイランズ | 13.41% | 14.60% | 11.64% |
上記の資本成長率はスコットランドにある128の蒸留所が対象です。
2020年の資本成長率はスペイサイドも含めて10%前後となっており、キャンベルタウンやアイラは15%を超えています。
上記の数値は参考値になりますが、スペイサイドを含むスコッチウイスキーの蒸留所の成長性が高いことが分かる結果となりました。
ウイスキー投資を検討している方で、資本成長率について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
スペイサイドについて代表的な蒸留所を含めた特徴や魅力について解説しました。
多くの蒸留所が集中するスペイサイドはウイスキーの製造に適した環境であり、人気の蒸留所の多くがこのスペイサイドで生まれています。
ウイスキー初心者の方がウイスキーの製造地について知るなら、まずはスペイサイドについて理解を深めることがおすすめです。