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【独占インタビュー】ハイランドクイーンのキーモルトを手がけるタリバーディン蒸溜所、ほぼ全ての工程を自社で行う理由とは?

2024.05.30 / 最終更新日:2024.05.30

タリバーディン蒸溜所は、スコットランド ・ハイランドの入口に位置する独立系蒸溜所です。

麦芽製造(モルティング)を除くウイスキー造りの全工程を自社で行う数少ない蒸溜所の1つです。操業停止を乗り越え、ハイランドクイーンのキーモルトとシングルモルト、ソブリンをはじめとする、ブレンデッドウイスキーとシングルモルトウイスキーの両方で代表的なボトルを持つブランドに成長しました。

今回Dear WHISKYは、タリバーディン社のマーケティングマネージャー、ロズリン・ナトール・ジョーンズさんに独占インタビューを行いました。

タリバーディン蒸溜所の歴史や企業理念、ウイスキー造りへのこだわりなどについて伺いました。また、ロズリンさんの経歴や蒸溜所での思い出に残っている瞬間、これからの展望など、ロズリンさん自身にも焦点を当てています。ぜひ最後までお読みください!

タリバーディン蒸溜所 紹介

蒸溜所名 タリバーディン蒸溜所
設立年 1947年
オーナー ピカールワイン&スピリッツ
住所 Tullibardine Ltd. Blackford, Perthshire, United Kingdom, PH4 1QG
公式HP タリバーディン蒸溜所

タリバーディン蒸溜所の外観

タリバーディン蒸溜所の背景

蒸溜所のはじまり

Dear WHISKY:
タリバーディン蒸溜所はいつ設立されましたか?

ロズリンさん:
1947年に設立され、1949年に営業を開始しました。

1900年以降にスコットランドで建設された最初の蒸溜所と言われています。

Dear WHISKY:
タリバーディン蒸溜所の創設者を教えてください。

ロズリンさん:
蒸溜所の専門家であり、後にジュラとグレンアラヒーの創設者として知られるウィリアム・デルメ・エヴァンスさんがタリバーディン蒸溜所を設立しました。

ウィリアムさんは現在蒸溜所が建てられているパースシャーのオチルヒルズを訪れ、近くの泉から湧き出るミネラル豊富な水の性質が蒸留に最適であることに気づきました。そして現在の場所に蒸溜所を設立することにしたそうです。

1947年からの歴史を持つタリバーディン蒸溜所

操業停止を乗り越えた経験

Dear WHISKY:
1994年から2003年にかけての創業停止はタリバーディン蒸溜所にどのような影響を与えましたか?

ロズリンさん:
操業停止によって蒸溜所とウイスキーを、シングルモルトブランドとして再構築できたと思います。工場が閉鎖される前は、タリバーディン蒸溜所はブレンデッドウイスキーのキーモルトとしては知られていましたが、シングルモルトのブランドとしては認識されていませんでした。

操業を再開してからは、豊かな歴史と伝統だけでなく、こだわりのウイスキー造りをアピールしたブランドストーリーと斬新なアプローチによって、シングルモルトのブランドとして広く知られるようになりました。

タリバーディン蒸留所のウイスキー

蒸溜所周辺の環境

Dear WHISKY:
タリバーディン蒸溜所の周辺環境はウイスキーにどのような影響を与えていますか?

ロズリンさん:
パースシャーのオチルヒルズの麓に位置しているため、ウイスキーを製造する過程で、高い純度の水を利用することができます。

もともと、この場所に蒸溜所を設立した理由も高い品質の水を手に入れることができるためだったと聞いています。

Dear WHISKY:
きれいな水がウイスキー造りに活かされているのですね!では、周辺の地域との交流はどのように行われていますか?

ロズリンさん:
「森の学校」を始めとして地元で開催されるイベントなどのサポートを行っています。

タリバーディン蒸溜所周辺の豊かな自然

テロワール社によるオーナーシップ

大きな変化をもたらしたテロワール社

Dear WHISKY:
ピカール社の傘下であるテロワール社による買収以降、タリバーディン蒸溜所はどのように変わりましたか?

ロズリンさん:
タリバーディン蒸溜所はウィリアム・デルメ・エバンスさんに買収されて以降、複数のオーナーの手を経てきましたが、最も大きく変化したのは 2011 年にピカール社の傘下であるテロワール社に買収された時だと思います。

敷地全体が広大になり、ボトリングホール、樽貯蔵庫、倉庫を新しく設立することができました。このことから、より管理がしやすくなり、ウイスキーの質を向上させることに成功しました。

Dear WHISKY:
テロワール社のなかでタリバーディン蒸溜所の立ち位置はどのような感じですか?

ロズリンさん:
タリバーディンはテロワール社、最大のブランドの1つであり、ビジネス全体の重要な部分を占めています。

ワイン樽を使った熟成

Dear WHISKY:
テロワール社が経営を行うことになり、タリバーディン蒸溜所はどのように変わりましたか?

ロズリンさん:
テロワール社はブドウ畑を所有しているため、ウイスキーの熟成にワイン樽が容易に利用できるようになりました。それにより、タリバーディン蒸溜所が熟成で使用する樽の種類が増え、様々な味わいを追求できるようになりました。

Dear WHISKY:
ブドウ畑はどのようにウイスキー造りに活用されていますか?

ロズリンさん:
ワイン造りなどに使用された樽を、ウイスキー造りに用いています。例えばピノ・ノワールの樽をタリバーディン228バーカンディフィニッシュのカスクフィニッシュに使用しています。また実験的に、ルイ・ロワイエ・コニャックの樽をウイスキー熟成に使用する取り組みもしています。

タリバーディン蒸溜所の貯蔵庫

タリバーディン蒸溜所のウイスキー

高い品質を保つ取り組み

Dear WHISKY:
ウイスキー造りにおいて、どのような点を最も大切にしていますか?

ロズリンさん:
酒質を良いものにするということを重視しています。造ったウイスキーの品質が確実に優れたレベルであるように、生産プロセスのあらゆる段階に細心の注意を払っています。

Dear WHISKY:
タリバーディン蒸溜所ではどのような点にこだわり、ウイスキーを造っていますか?

ロズリンさん:
タリバーディン蒸溜所は麦芽製造を除く全ての工程を自社で行っています。これはスコットランド内にある蒸溜所では珍しいことです。

そのため、蒸留からお店で販売するまで、ウイスキーの一滴一滴に細心の注意を払って管理していると誇りを持っています。

現在は、ノンエイジウイスキー(NAS)やカスクフィニッシュ、限定版のウイスキー、熟成が長く希少なウイスキーなどを造っています。

手頃な価格帯で、高いレベルのウイスキーを購入できるということをお客様に広く知っていただければと思います。

樽の点検を行っているタリバーディン蒸溜所の職人の方

全行程をタリバーディン蒸溜所で

Dear WHISKY:
ほぼ全ての行程をタリバーディン蒸溜所で行うメリットはどのようなものですか?

ロズリンさん:
ウイスキー製造の過程をあらゆる側面から管理することができるため、新しい製造方法を試したり、樽や仕上げの面で実験をしたりすることが簡単にできます。

また、発生した問題や変更にすぐに対応することもできるため、あらゆる面で我々の誇りとするウイスキー造りを体現することができます。

タリバーディン蒸溜所のウイスキー

Dear WHISKY:
タリバーディン蒸溜所のウイスキーの味わいの特徴を教えてください!

ロズリンさん:
タリバーディン蒸溜所で造られるウイスキーには、新鮮なフルーツの香りやバニラのような甘さがあり、最後は滑らかでバランスの取れた後味を持つのが特徴です。定番商品にはソーテルヌ、ブルゴーニュ、シェリーのほか、ファーストフィルのバーボン樽で熟成させたものなどがあります。

Dear WHISKY:
それぞれのウイスキーにはどのような違いがありますか?

ロズリンさん:
共通してバニラのような甘さとバランスの取れた後味が楽しめますが、味わいにはそれぞれ異なった魅力があります。

色々な種類のウイスキーを楽しむことができるので、「ウイスキーのお菓子屋さん」のようだと言われます。

タリバーディン蒸溜所で造られたDistillery Edition No.5のボトル

長年熟成されたコレクションの秘密

Dear WHISKY:
なぜタリバーディン蒸溜所では、主に長期熟成のウイスキーを造っているのですか?

ロズリンさん:
全体的に見て、タリバーディン蒸溜所のウイスキーは樽材との相性が非常に良く、比較的長期間熟成してもウイスキーの特徴が損なわれないということに気がつきました。

タリバーディン蒸溜所の定番商品はノンエイジステートメントウイスキー(NAS)ですが、イメージする味を造り出すために、熟成年数が若すぎるウイスキーはあまり使われません。

結果としてウイスキーの特徴が際立ち、オーク材に負けていないという評価をいただいています。

またタリバーディン蒸溜所には、非常に熟成が長く希少なウイスキーがあるため、それらをカストディアン・コレクションとして発売したいと考えています。

ハイランドクイーンのキーモルトとして

Dear WHISKY:
タリバーディン蒸溜所で製造されたウイスキーのどれくらいがハイランドクイーンに使われていますか?

ロズリンさん:
ハイランドクイーンはタリバーディン蒸溜所の原酒がキーモルトとして使われているブレンデッドウイスキーですが、その詳細については企業秘密のため、お話しできません。

Dear WHISKY:
タリバーディン蒸溜所のウイスキーのどのような部分がブレンデッドウイスキーに適していると思いますか?

ロズリンさん:
タリバーディン蒸溜所は模範的なハイランドモルトウイスキーであり、モルトの柑橘類とフローラルな香りを強く感じることができます。そのためシングルモルトとしてもブレンデッドウイスキーのキーモルトとしても適しています。

製造工程について

モルトの仕入れ先

Dear WHISKY:
モルトはどこから仕入れていますか?

ロズリンさん:
複数のモルトスターから仕入れているため、明確な場所はお伝えできませんが、週に6回蒸溜所に配達されています。

樽の種類

Dear WHISKY:
タリバーディンではどのような種類の樽がどのような割合で使用されていますか?

ロズリンさん:
タリバーディン蒸溜所ではバット、ホグスヘッド、バレル、バリックなど様々な樽を使用します。タリバーディン蒸溜所の全てのウイスキーは、最初にファーストフィルのバーボン樽で熟成されるため、大部分の樽はファーストフィルバーボン樽になります。その後にシェリー樽やソーテルヌ、ピノ・ノワールの樽で熟成されるものが多く、これらでタリバーディン蒸溜所の定番商品ウイスキーを造っています。

Dear WHISKY:
樽は誰が選んでいるのでしょうか?

ロズリンさん:
タリバーディン蒸溜所のマネージャーとブレンディングアナリストが樽を選びます。樽の香りから、タリバーディン蒸溜所の求めている味わいに適しているのかを判断します。

タリバーディン蒸溜所に貯蔵されている樽

ロズリン・ナトール・ジョーンズさんについて

ウイスキー業界に就く前の職歴

Dear WHISKY:
まず簡単な自己紹介をお願いします!

ロズリンさん:
私はタリバーディン蒸溜所のマーケティング・マネージャーをしております。タリバーディン蒸溜所では2年あまり働いており、スコッチブランド(タリバーディン、ハイランドクイーン、ミュアヘッズ)のマーケティング活動の全てを担当しています。

Dear WHISKY:
どうしてウイスキー業界で働こうと思ったのですか?

ロズリンさん:
私が最初にした仕事は業界誌「Dram」でした。2010年にウイスキー業界について学び始め、それと同時に、大のウイスキーファンである父と一緒にテイスティングに行くようになりました。

その後ロンドンに引っ越し、ウイスキーのイベントやフェスティバルに参加する中で、自分の好きなことを日々の仕事にしたいと思うようになり、この業界で働きたいと思うようになりました。

Dear WHISKY:
これまでのキャリアは、ロズリンさんの現在の仕事にどのような影響を与えていますか?

ロズリンさん:
メディア業界、アウトドア衣料品、家庭用品の仕事を経て、ウイスキー業界に入りました。ウイスキーに興味を持つまでに時間はかかりましたが、この仕事をすると決めたことに後悔はありません。

ウイスキー業界は、私がこれまでに携わった中で最高のコミュニティーです。この業界の誰もが自分の仕事に情熱を持っており、自分自身も熱意をもって仕事に取り組むことができます。

私は、長年にわたって培ったスキルを、自分が情熱を持っているこのウイスキー造りという仕事へ活かすことができ、とても嬉しく思います。

タリバーディン蒸溜所で造られた15年のシングルモルトウイスキー

タリバーディン蒸溜所での経験

Dear WHISKY:
タリバーディン蒸溜所で働くことになったきっかけは何ですか?

ロズリンさん:
ロンドンで7年間過ごした後、パンデミックの直前にスコットランドに戻りましたが、いずれは蒸溜所で働きたいと常に考えていました。

そのためタリバーディン蒸溜所からお誘いをいただいた時は、そのチャンスに飛びつきました!

Dear WHISKY:
タリバーディン蒸溜所でのどのような仕事に誇りを感じますか?

ロズリンさん:
以前から新製品開発に興味がありましたが、タリバーディン蒸溜所に入社するまで携わる機会はありませんでした。そのため、新製品開発に携わっていることを誇りに思います。最近は、私がパッケージのデザインを担当し、8年熟成のボトルとリニューアルされた15年のボトルを発売することができました。

そのボトルが、スピリッツビジネスデザイン&パッケージングアワード2023でマスターメダルを受賞することができた時は、自身の仕事を誇りに感じた瞬間でした。

Dear WHISKY:
蒸溜所で思い出に残っていることを教えてください。

ロズリンさん:
特別イベントの一環として、9月の風が強い夜、スターリングのウォレスモニュメントの頂上でテイスティングイベントを開催しました。このイベントのためにウォレスモニュメントが金色に装飾され、試飲を始めるちょうどいいタイミングで風が止みました。そこでの景色もウイスキーも格別でした!

Dear WHISKY:
タリバーディン蒸溜所でお気に入りのウイスキーはありますか?

ロズリンさん:
決めがたいですが、お気に入りはザ・マーレイ・トリプル・ポートです。

ザ・マーレイ・トリプル・ポート(The Murray triple port)のボトル

今後の展望

Dear WHISKY:
タリバーディン蒸溜所の次の目標は何ですか?

ロズリンさん:
ブランドの勢いを維持し、タリバーディン蒸溜所のことを世界中の人に知ってもらうために、引き続き努力していきたいと思います。

Dear WHISKY:
ロズリンさんご自身の今後の目標などはありますか?

ロズリンさん:
私がタリバーディン蒸溜所で行ってきた仕事の多くは、タリバーディン蒸溜所の歴史を多くの人と共有し、みなさんに知ってもらうことでした。

そのため今後の私の個人的な目標も、ブランドの認知度を更に向上させ、できるだけ多くの人にタリバーディン蒸溜所で造ったウイスキーを好きになってもらうことだと考えています!

Dear WHISKY読者へのメッセージ

Dear WHISKY:
Dear WHISKYの読者の方にメッセージをお願いします。

ロズリンさん:
今年も、ウイスキーを飲んで素晴らしい1年をお過ごしください。

最後に

以上、タリバーディン蒸溜所のロズリンさんへのインタビューでした!

タリバーディン蒸溜所の歴史や魅力だけではなく、「誰もが自分の仕事に情熱を持っている」ウイスキー業界で働くことへの想いについても語ってくださいました。

タリバーディン蒸溜所ではウイスキーに情熱を持つ人々を魅了し続け、世界的な認知度を高めていくために今後も様々なウイスキーを発売していきます。

ウイスキーに対するたゆまぬ努力と情熱により、2024年も次なる目標に向けて突き進むタリバーディン蒸溜所に目が離せません!

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