【独占インタビュー】第1弾:世界一のウイスキーコミュニティ、ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティに独占インタビュー
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イギリス本土の北端にある8ドアーズ蒸溜所(エイトドアーズ蒸溜所)は、2022年の9月にキャンベル夫妻によって設立されました。
チャールズ3世の訪問で話題となったこの蒸溜所は、180年という長い間ウイスキー造りが行われていなかったこの地域に、ウイスキー造りの文化を復活させました。この記事では、創設者のケリーさんとデレクさんによる蒸溜所の案内やこの地でウイスキーを造ることに対する熱い想いについてご紹介します。
蒸溜所名 | 8ドアーズ蒸溜所 |
創設者 | ケリー・キャンベル、デレク・キャンベル |
住所 | 8 Doors Distillery, John O’Groats, KW1 4YR, Scotland, UK |
創設年 | 2022年 |
公式サイト | 公式HPはこちらから! |
SNS | Instagram:@8doorsdistillery Facebook:8 Doors Distillery X:@8DoorsWhisky |
8ドアーズ蒸溜所はイギリス本土の最北端のウイスキー蒸溜所として、美しい絵画のような街、ジョン・オ・グローツに位置しています。
この蒸溜所は、ウイスキーへの深い愛と地元への深い関わりを持つ、ケリー・キャンベルさんとデレク・キャンベルさんによって2022年に設立されました。
そんな新進気鋭の8ドアーズ蒸溜所を支えるのがウイスキー業界に携わって40年以上の経験を持つベテランのジョン・ラムゼイさんです!
ジョンさんは、以前エドリントン社で17年務めていた経験も持ち、そこではマスターブレンダーとして、ザ・フェイマスグラウス、カティサーク、ザ・グレンロセス、ハイランドパークなどの様々なブランドを造りました。ジョンさんの引退の際は、多大なる功績をたたえると共に敬意を表して、ザ・グレンロセスの限定品である「ザ・グレンロセス ジョン ラムゼイ レガシー」を発売されました。
ジョン・オ・グローツという土地は、理想的なウイスキー製造環境にも関わらず、8ドアーズ蒸溜所が設立されるまで180年という長い間、蒸溜所が建てられたことはありませんでした。2023年8月2日に開所式を迎えた際には、チャールズ3世がビジターセンターや蒸溜所、倉庫を見学し、8ドアーズ蒸溜所のメンバーと交流しました。
8ドアーズ蒸溜所の「8ドアーズ」は、15世紀に存在したの人物であるヤン・デ・グルートさんに由来しています。彼こそ、「ジョン・オ・グローツ」という土地の名前の由来となった人物です。
ジョン・オ・グローツハウスホテルの近くにある小高い丘の周辺に、ヤン・デ・グルートさんの自宅がありました。1400年後半~1500年前半の間にこの地域に住み着いたオランダ人だったヤン・デ・グルートさんは、スコットランド本土とオークニー島を結ぶフェリー事業を運営し、1グロート(約2ペンスに相当)で提供していました。彼には、7人の息子がいましたが食事の際には誰がテーブルの先頭に座るかでよく家族喧嘩をしていたそうです。
その喧嘩を止めるため、8つの壁にそれぞれドアと窓が付いた八角形の家を建てました。それによって、誰かがテーブルの先頭に座るということができなくなり、このような喧嘩が起きることはなくなったそうです。
地元住民の間でよく知られているこの話から、8ドアーズ蒸溜所という名前が付けられました。
8ドアーズ蒸溜所の概要については、下記の公式ビデオをぜひご覧ください!
参照:8ドアーズ蒸溜所公式サイト
8ドアーズ蒸溜所は、イギリス本土の最北端の村に位置しています。車で訪れることを最もおすすめしており、東海岸沿いを走らせることで息を吞むようなスコットランド高地を眺めることができます!
唯一の難点は車での長距離運転が必要になることですが、それを払拭するほどの素晴らしい景色を見ることができます。
インバネスから約2時間40分、エディンバラから約6時間かかるため、ドライブが好きな人は美しい景色を満喫しながら楽しむことができるでしょう。
車移動だけでなく、電車での移動も可能です。
インバネスからウィックまたはサーソーまで電車で移動し、そこからタクシーかバスを使ってジョン・オ・グローツに行くこともできます。ただし、公共交通機関が満足でない場合もありますので、十分に注意して活用してください。ウィックにも空港がありますが、現在はアバディーン発着の限られた数の便しか運航していません。
8ドアーズ蒸溜所は設立されたばかりの蒸溜所のため、まだシングルモルトを発売していません。しかし、2022年9月にブレンデッドスコッチウイスキー「The Seven Sons」シリーズを発売しました。
また、ブレンデッドウィスキーリキュール「Five Ways」は蒸溜所店頭とオンラインから購入可能です。
詳細については、こちらからご覧ください!
8ドアーズ蒸溜所には、北海の魅惑的な景色が見れる居心地の良いウイスキーラウンジがあります。上質な雰囲気に加えて、高地から調達し焙煎した特別な豆を使用したコーヒーも提供しています。
このウイスキーラウンジでは、ウイスキーやカクテル、コーヒー、そしてケーキなどを楽しむことができます。カクテル好きにはうれしい、ウイスキーカクテルやノンアルコールのカクテルも提供しているため、運転で来られた方も楽しむことができます。また、ラウンジで提供されるフードは地元の職人の方が作っており、ギフトショップも併設されています。
8ドアーズが位置する場所はロケーションが最高であるため、ドライブに理想的な場所です。ケリーさんとデレクさんも、このような魅力的な風景があるとウイスキーがさらにおいしくなると話していました。
現在、8ドアーズ蒸溜所では3つのツアーを開催しています。
概要 | 美しい蒸留器を見ながらウイスキーのテイスティングを行うことができます。1日に何度も開催しているため、ご都合の良い時間帯をご選択ください。 |
所要時間 | 20分 |
料金 | 12ポンド |
開催日時 | 終日。予約は当日現地で受付。 |
概要 | お忙しい方のために用意したツアーです。このエクスプレスツアーには、蒸溜所と倉庫を見学した後、テイスティングルームで3つのウイスキーをテイスティングすることができます。ぜひご参加ください。 |
所要時間 | 45~60分 |
料金 | 15ポンド |
開催日時 | 毎日午後3時と午後4時15分。予約はこちらから。 |
概要 | 8ドアーズ蒸溜所について理解することのできるツアーです。ウイスキーの製造方法を詳しく知り、倉庫で時間を過ごし、テイスティングルームで5つのウイスキーをテイスティングすることができます。ぜひご参加ください。 |
所要時間 | 1時間15分~1時間30分 |
料金 | 24ポンド |
開催日時 | 毎日午前11時30分。予約はこちらから。 |
ケリーさんとデレクさんが親切に蒸溜所を案内してくれました!
デレクさん:
8ドアーズ蒸溜所は、人里離れた自然豊かな場所にあるため、水の調達において独自の利点を活かしています。ウイスキーの製造に使用される水は、「ジョン・オ・グローツ」の地下水を利用しており、敷地内に開けられた穴を利用し地下60メートルから汲み上げられます。
ジョン・オグローツでは「今日の雨は明日のウイスキー」と言い伝えられているほど、ウイスキー造りに欠かせない上質な水が育まれています。
ケリーさん:
大麦に関しては、主に天然のピートが使われたスコットランド産のモルトを使用しています。設立したばかりの蒸溜所のため、まだモルトの自社製造を行うことができません。そのかわりに、大麦は専門家によって製粉され、25kgの袋で配送されます。
このグリストブレンドは、ハスク20%、グリッツ70%、フラワー10%の黄金比を維持し、糖化とろ過の過程をバランスを取りながら行っています。
デレクさん:
私たちは元々はエディンバラの醸造所でビール醸造に使われていたステンレス製のマシュタンを使用しています。1回の糖化工程では400kgの大麦が使用されます。
8ドアーズ蒸溜所のマッシュタンの特徴として、マッシュコンバージョンベッセルとセミロータータンと呼ばれる特殊な設備があげられます。
これらの設備はさまざまな調整を行えるようになっているため、タンク内の正確な温度制御が可能になります。現在は主にシングルモルトウイスキーを造っていますが、今後、地元のオーツ麦などのさまざまな穀物を使用することを想定して、柔軟に対応できるような構造になっています。
デレクさん:
一度マッシングが終了すると、麦汁はエディンバラ醸造所から調達したウォッシュバックに移されます。およそ20度から28度の温度を維持して発酵が行なわれます。マッシングが終了すると、アルコール度数は4.0~9.2%に達します。
発酵がはじまって最初の70時間が経過するとアルコール度数は増えなくなりますが、さらに20~30時間発酵を続けることにより、フルーティーな風味が生まれます。ニューメイクを試飲すると、約100時間に及ぶ発酵プロセスによって生まれた豊かで複雑な風味を感じることができます。
酵母は基本的にFermentis M-1 イーストを使用しており、軽くフルーティーな風味をもたらします。酵母は手作業でウォッシュバックに加えられています。
デレクさん:
8ドアーズ蒸溜所ではSpeyside Copper Works社が造った伝統的な蒸留器を使っています。Speyside Copper Works社の工場を訪問した際、本物の職人技を見て圧倒されました。熟練した職人が、19世紀から受け継がれる技術を使い、平らな銅板をハンマーで蒸留器の形に打ち込んで造られます。そのため、この蒸留器の表面をよく見ると、手打ちの跡が残っているのがわかります。
デレクさん:
8ドアーズ蒸溜所で使っている初留釜の容量は1,700リットルですが、再留釜の容量は最大1,300リットルです。これらの蒸留器は、8ドアーズ蒸溜所のサイズに合わせて小さめに造られています。
また少し傾斜したラインアームは、より軽い原酒のみを通すように構成されているため、結果的に、非常に満足のいく口当たりを備えた軽くてフルーティーな特徴がニューメイクにみられます。
デレクさん:
8ドアーズ蒸溜所では、全ての工程を手作業で行っています。ジョン・ラムゼイ率いる蒸溜所のチームは、 注意深く温度パネルと覗き窓を見ながら、伝統的な方法で蒸気をコントロールしています。ガラス越しに泡を観察すると、沸騰がいつ始まるかが分かり、通常、沸騰は約90~92度で起こります。
ミドルカットも手作業で行われ、温度、ノージング、アルコール度数に基づいてアルコール度数が64%から74%に調整されます。
1回のウォッシュ蒸留と1回のスピリット蒸留を行い、私たちの蒸留器はわざと遅いペースで稼働をしています。
このアプローチと蒸留器のデザインを組み合わせることで、蒸留全体を通して原酒と銅の接触を増やし、軽くてフルーティーな特徴が生まれます。
デレクさん:
熟成工程は蒸溜所のすぐ隣にある倉庫で行っています。海岸沿いに位置しているため、冷たく湿った海気が樽の熟成に影響を与えています。
特に海しぶき、そして涼しい気温は、ウイスキーの複雑さを造る役割を果たしています。
デレクさん:
8ドアーズ蒸溜所で取り扱っているファーストフィルシェリーカスクは、スペイン南部にある家族経営の小さな樽製造所であるCasknoliaと提携しています。
樽職人は、自然乾燥したアメリカン、ヨーロピアン、スペインの板材を加工して、蒸溜所のために特注の樽を造ります。
これらの樽は提携先のワイナリーで最長2年間風味を加えられます。樽のサイズには、50Lオクターブ樽、130Lクォーターカスク、250Lホッグスヘッド、500Lシェリーバットが含まれます。
ケリー・キャンベルさんとデレク・キャンベルさん夫妻は、ウイスキーへの愛と地元への深い献身が原動力となり、蒸溜所を設立するという壮大な夢を叶えました。イギリス本土の最北端、ジョン・オ・グローツに位置する8ドアーズ蒸溜所では、地元の熟練チームが北海からのさわやかな潮風の恩恵を受けて熟成させた素晴らしいウイスキーを製造しています。
スコットランド高地の雄大な自然に囲まれた8ドアーズ蒸溜所への魅力は伝わりましたでしょうか?現在8ドアーズ蒸溜所ではブレンデッドウイスキーシリーズであるThe Seven SonsとFive Waysが販売されています。シングルモルトウイスキーの発売を待ちながら、ブレンデッドウイスキーを楽しむのもいいですね。
ケリーさんとデレクさんの夢の実現の舞台裏についてのインタビューの記事もぜひご覧ください!