【現地レポート】博物館併設!ノーサンブリアの文化を伝えるアドゲフリン蒸溜所
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世界遺産・宮島の対岸にある創業の地、広島県廿日市市桜尾に誕生したSAKURAO DISTILLERY。
南には美しい瀬戸内海が、北には立派な中国山地という異なる自然環境を有するこの廿日市市に、SAKURAO DISTILLERYはあります。
SAKURAO DISTILLERYは、100年以上に渡り培われてきた蒸留技術や伝統を大切にしていることでも知られています。
今回、Dear WHISKYはSAKURAO DISTILLERYの現地で蒸留所見学をさせていただきましたので、その様子をお伝えします!
また、次回のインタビュー編では蒸留責任者の山本奉平さんに、SAKURAO DISTILLERY設立への想いや、ウイスキー造りへのこだわり、そして100周年を迎えるジャパニーズウイスキーへの想いなどについて伺いました。
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1918年に現在の前身である旧中国醸造は
「発酵技術と地元資源を活かし、食の楽しさを伝えるために挑戦を続ける」
という経営理念を掲げ、受け継がれ続けた技術を大切に日々お酒造りに励みました。創業から約100年の時を超え、ついに2017年12月にこのSAKURAO DISTILLERYが設立されました。
SAKURAO DISTILLERYでは
「伝統と革新で広島から世界へ。」
という言葉を掲げ、現在も長い間培われてきた技術や伝統を大切に新たなる創造に挑戦しています。
2021年には、「シングルモルトジャパニーズウイスキー 戸河内 1st Release CASK STRENGTH」が、アメリカで行われたNew York World Wine and Spirits Competition 2021のBest Other Single Malt Whisky部門にて、最高金賞である「Double Gold」を受賞し、その中でも最も優れたウイスキーに与えられる「Best of Class」を受賞するなど世界からも注目を浴びています。
蒸留所名 | SAKURAO DISTILLERY |
創業 | 2017年 |
代表 | 白井 浩一郎 様 |
所在地 | 広島県廿日市市桜尾一丁目12番1号 |
電話番号 | 0829-32-2111 |
公式HP | SAKURAO DISTILLERY公式ホームページ |
SAKURAO DISTILLERYは瀬戸内海に程近い場所にあります。
現在は埋立地となってしまいましたが、その昔は蒸留所の真横の場所まで船が着港できたため、原料をすぐに受け取ることができたそうです。
瀬戸内海のほど近くにあるものの、ここ廿日市市は中国山脈に挟まれているため、1つの場所で近くに海と山のどちらも見ることができます。
蒸留所に入り最初に目に入るのがこのビジターセンターです!綺麗な暖簾がかかっておりツアーの参加者や観光客の方々など多くの人が吸い込まれていきました。
ちなみに、SAKURAO DISTILLERYのロゴの上半分は「雫」で、次の100年に向かっての新たな挑戦という「革新」の意味、下半分は「桜」で、100年以上積み上げてきた「伝統」という意味が秘められているそうです!
スコットランドの蒸留所のように観光までできることを目指し、バーカウンターやデザインなど細部までこだわりがありました!
バーカウンターの近くには、蒸留所の歴史を映像で振り返ることのできるタブレットや、バーテンダーの方々などと勉強会などで使うスペースまで完備されていました。
ビジターセンターの奥には、バーカウンターまで完備されています!
そこでは、桜尾のウイスキーからジンまでをテイスティングすることができます。
テイスティングは、ツアーの参加者限定となりますので、ぜひツアーにご参加ください!
バーカウンターにはオリジナルのバーマット(販売もしています)が置かれ、さらにその横には煌びやかで美しい2種類のSAKURAOのロゴが入ったシェイカーがありました!
SAKURAO DISTILLERYのロゴの入ったオリジナルノートやトートバッグなどの限定グッズが販売されていました!
白と黒を基調としたデザインの建物がお出迎え!
SAKURAO DISTILLERYのある廿日市市は年間を通じて雨は少なく温暖である一方で、夏は非常に暑いそうです。
蒸留所の中に入る前になんとポットスチルがあります。実は、旧中国醸造だった頃に写真左側のポットスチルを実際に使用していたと言われています。
100年以上の歴史を改めて実感することができます。
蒸留所に向かって歩いていると、蒸留所の敷地内では見慣れないものがありました。それはなんと、キッチンカーです!
こちらのキッチンカーは、地元広島のイベントに出店し、ウイスキー、ジン、カクテルなどを提供しているそうです。
昨年では3度ほど、地元広島東洋カープの試合の際に、スタジアムへ出店しているとのことで、カープファンの方はご存知かもしれませんね!
ここからはいよいよ実際にウイスキーを製造している場所へと進んでいきます!
蒸留所に着くまでに様々な興味深いものがありましたが、ついに蒸留所に到着しました!
Distillery I と呼ばれるこの建物は、黒を基調としたデザインになっております。
麦芽は1つに統一するのではなく、様々な可能性を考慮して多種多様な麦芽を使用しています。
「ハスク:グリッツ:フラワー」の割合は、SAKURAO DISTILLERYのある気候や水源に合わせて、粉砕を行っているそうです。
ウイスキーを飲む方にとっては良く聞きなじみのある「ピート」ですがウイスキーからではなく原材料として感じたことはありますか?
SAKURAO DISTILLERYではこのピートの麦芽の香りを体験することができます!
実際に用意されているのは、ノンピートの麦芽とヘビーピート(50ppm)の麦芽です。
SAKURAO DISTILLERYのポットスチルは、初留器と再留器の2つがあります!
まず初留器ですが、よく見かける通常の単式蒸留器にはなっているものの、ネックの部分がかなり細くなっているのが特徴です。
続いて再留器ですが、SAKURAO DISTILLERYではハイブリットスチルを使用しています。
細長い窓のようなものがついているものの側面に6つのレバーがありますが、これを動かすことで何段の蒸留をするか決めることができます。
ジンの際には、蒸留するベースのスピリッツとボタニカルを入れて蒸留しています。
その際に使用するのは、ウイスキーの再留器のハイブリッドスチルです。
ポットスチルとコラムスチルの間にあるバスケットは、ボタニカルを入れるためにあります。このバスケットの中を蒸気が通る際に、ボタニカルの香りを抽出できるそうです。
特徴としてはドライジンの製法に習った方法を用いていることです。この製法とは、スティーピング製法とヴェイパー製法という2つの製法を用いて香りを抽出する製法です。
多種多様なボタニカルを使用するならではの工夫が感じられます。
真ん中にあるのが SAKURAO GIN ORIGINAL で、こちらはマケドニア産のボタニカルを使用しています。
右側がリミテッドで、こちらは17種類全てのボタニカルが広島県産のものだそうです!
特に、広島県内に自生しているジュニパーベリーの実は貴重です。このジュニパーベリーの木は、雌木にしか実がつかないことや、そもそも雌木の割合が全体の中でも少ないなど、非常に難しい木です。
左側が夏限定の HAMAGOU です。
夏限定の HAMAGOU は、国内のみならず、海外のお客様にも非常に人気だそうです!
桜尾の貯蔵庫には、モルトウイスキーやグレーンウイスキーを含めて約4,000樽が貯蔵されています。
モルトウイスキーはダンネージ方式で貯蔵されており、グレーンウイスキーはパラタイズ方式で貯蔵されています。ウイスキーの種類によって貯蔵の仕方が異なるのは、モルトウイスキーの場合、熟成途中にテイスティングなどを行う必要があるからだそうです!
こちらの貯蔵庫には窓も空調もないため、温度管理はまさに「自然由来」となっています。
夏場は、かなり温度が上がることもあり揮発が進むため、実際にお仕事をしている最中に少し目が痛いくらいになることもあるそうです。
一方で冬場は、外気温より少し暖かい空間になります。
桜尾貯蔵庫には、バーボン樽や手に入りにくいミズナラ樽、そしてシェリー樽など非常に多くの樽がありました。
その他にもビール樽などもあり、これからのSAKURAO DISTILLERYのウイスキーがより一層楽しみになりました。
豊かな森林と清流がありなす色彩、景観の美しさが際立つ安芸太田町戸河内。そんな山あいの地にある、かつて鉄道用として使われたトンネルを活かしている貯蔵庫が戸河内貯蔵庫です。
四季を通じて冷涼な気候を保つ薄暗い貯蔵庫では、SAKURAO DISTILLERYで蒸留されたモルト原酒が新緑の香りをたっぷり吸いこんんだ樽の中で、静かに熟成のを重ねています。
以上、SAKURAO DISTILLERYの現地レポートでした!
瀬戸内海と中国山脈という大自然に囲まれたSAKURAO DISTILLERYは、広島という自然や原料を生かした長年に渡って培われてきた蒸留技術を惜しみなくウイスキー造りに注いでいました。
そして、造りだけではなくより多くの方が楽しめるようにと「観光ができる」蒸留所でした。
日本語と英語どちらでもツアーを開催しているので、広島に訪れた際にはぜひSAKURAO DISTILLERYへ足を運んでみてはいかがでしょうか?
次回の蒸留責任者山本さんへのインタビュー編では、山本さんの数多くのご経験やウイスキー造りにかける想い、そしてこれからのSAKURAO DISTILLERYと日本のウイスキーへの熱い想いを伺いました!
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