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2022年に設立されたTri Carragh(チカラ)は、スコットランドのエディンバラに拠点を置くスタートアップのインディペンデント・ボトラーズです。Tri Carraghはシングルカスク、シングルモルトを中心に販売し、高品質なウイスキーへのこだわりから世界的に評価されています。
今回は、Tri Carraghを運営するStravaig Spirits社の共同設立者であるオラ・ロパトスカさんに、ご自身のキャリアとTri Carraghの理念についてお話を聞いてきました!
(取材日:2023年11月28日)
会社名 | Tri Carragh |
設立年 | 2022年 |
創設者 | オラ・ロパトスカ、ライアン・マカファティ |
住所 | Hudson House, 8 Albany Street Edinburgh, Midlothian, EH1 3QB. |
公式サイト | Tri Carragh Stravaig Spirits Company |
Dear WHISKY:
始めにオラさんのキャリアについて教えてください!どのようなきっかけでウイスキー業界に入ったのですか?
オラさん:
私は、Scotch Malt Whisky Societyの営業・イベント部門担当として、初めてウイスキーに携わりました。ウイスキーがスコットランドで有名であることは知っていましたが、最初はウイスキーの味も香りも好きではありませんでした。
仕事をしていくなかで、ウイスキーは世界中の人々を魅了していることを知り、この業界に興味を持ちました。
Dear WHISKY:
Scotch Malt Whisky Society社に入社後は、バイク業界やIT業界などの様々な業界を渡り歩いていたかと思いますが、それには理由があったのでしょうか?
オラさん:
私は挑戦することや新しい経験をする事が好きです。居心地のいい場所から離れると学べることがあると思っているので、機会があれば積極的にオファーを受けています。元々考えていたわけではありませんが、そのような考え方が幅広い業界に携わることに繋がりました。
Dear WHISKY:
なぜ最終的にウイスキー業界に戻ることにしたのですか?
オラさん:
Scotch Malt Whisky Societyでウイスキーのテイスティング・イベントをした時に、ウイスキーは色々な場所に住む人々を繋ぐことができると気がつき、「なんて楽しくおもしろい仕事だろう!」と思ったからです。
そして、ウイスキーについて学んでいくうちに、その味が好きになり、ウイスキーをありがたく思うようになりました。
こうした感謝の気持ちがこの仕事への情熱へと変わっていきました。
Dear WHISKY:
ウイスキー業界で働くことにはどのような魅力がありますか?
オラさん:
私はウイスキー・コミュニティが大好きで、これほど働くことが楽しいと思ったことはありません。
とても小さな世界ですが、皆さんの熱意を感じます。
ウイスキーほど情熱を掻き立てられる業界は他にないと思います!
Dear WHISKY:
ビジネスパートナーのライアンさんとはどのように知り合いましたか?
オラさん:
私たちはScotch Malt Whisky Societyで一緒に働いており、あるイベントで私が営業・イベントチームとして参加した時に出会いました。彼はアンバサダーとしてお客様の前でシングルカスクやシングルモルトの魅力を伝えていました。
Dear WHISKY:
それからどのようにビジネスパートナーになったのでしょうか?
オラさん:
出会ってからすぐに、良き友人となりビジネスパートナーとなりました。
ウイスキーのコミュニティはとても狭く、みんなシングルカスクとシングルモルトが好きなのでとても仲がいいです。
お互いにホスピタリティを必要とする仕事の経験があるので、友情を築いていくことは決して難しくなかったですね。
Dear WHISKY:
なぜStravaig Spirits社を設立したのですか?
オラさん:
自分の情熱を持てることややりたいビジネスがあるなら、そのために行動することが良い方向へ向かう糧となると信じています。
企業を決めたもう一つの理由は、Scotch Malt Whisky Societyで働いていたことで得た人脈や繋がりがあったからです。
そのおかげで会社を設立することができました。
Dear WHISKY:
パンデミックの直後に会社を設立されたのには何か理由がありますか?
オラさん:
多くの人がパンデミックの期間に、毎日9時から5時までオフィスに行く必要はないと考えるようになったと思います。私たちもチャンスがあれば、その考え方を取り入れ、自分たちのやりたいことを自分たちでやりたいと考え始めました。
Dear WHISKY:
2023年にノミネートされた the Great British Entrepreneur Awards(グレート・ブリティッシュ・アントレプレナー・アワード)について教えてください!
オラさん:
これは毎年イギリス全土から起業家を推薦し、その功績を称えるものです。
私は2023年にスコットランドで開催されたアントレプレナー・オブ・ザ・イヤーにノミネートされました。
Dear WHISKY:
ノミネートされた時はどのようなお気持ちでしたか?
オラさん:
私たちのビジネスプランやその一年の功績を評価していただき光栄でした。最終選考まで残ったので、ロンドンでの授賞式に招待されました。英国の素晴らしい企業とともにノミネートされたことは、本当に素晴らしい経験でしたね。
Dear WHISKY:
Tri Carraghの親会社であるStravaig Spirits社はどのような会社ですか?
オラさん:
私たちはカスクブローカーであると同時に、インディペンデント・ボトラーズでもあります。
英国や海外に拠点を置く個人または企業のために、樽の仲介と管理を行っています。
また、インディペンデント・ボトラーズとして、個人や企業のブランド作りをお手伝いしています。私たちは、主に輸出用のシングルモルト・スコッチの樽の選定、ラベルのデザイン、瓶の選定から製品の輸出までをサポートしています。
Dear WHISKY:
Stravaig Spirits社の自社ウイスキーブランドとしてTri Carraghを立ち上げたのはなぜでしょうか?
オラさん:
私たちは2022年10月に「Tri Carragh」を設立しました。これは私たちがウイスキーの分野に長く携わっているものの、完成品がなかったからです。
ウイスキー好きとして自分たちの製品を持つことは長年の目標でした!
Dear WHISKY:
Tri Carraghの立ち上げはいつ頃から考えていたのですか?
オラさん:
おそらくStravaig Spirits社をスタートさせた頃からだと思います。以前から考えはありましたが、立ち上げの準備にとても時間がかかってしまいました。
Dear WHISKY:
Tri Carraghという名前の由来を教えてください。
オラさん:
Tri Carraghはゲール語で3本の柱という意味です。
その裏には、スコッチウイスキーを生み出す3大原料(水、大麦、酵母)の重要性を伝え、称えたいという想いがありました。
Dear WHISKY:
Tri Carraghのロゴは何を表していますか?
オラさん:
ロゴはスコットランドの地方で見かけるスタンディング・ストーンを表しています。これは宗教的な礼拝のための石だと言う人もいますが、その歴史的な意味はまだ解明されていません。
私たちはスコットランドの歴史と伝統という点にこだわりたかったため、これをロゴに選びました。
ライアンと私は、ウイスキーはもちろん、スコットランドの歴史や伝統についてもとても関心があります。それらはウイスキーの伝統に深く結びついているからです。これら2つの理由から私たちはスタンディング・ストーンを使うことで、自分たちが誇りに思えるロゴになると思いました。
Dear WHISKY:
Tri Carraghのウイスキーへのこだわりはどのような点にありますか。
オラさん:
私たちはお酒の瓶詰めだけをしている訳ではありません。瓶詰めするためのウイスキー選びは慎重に行い、発売を急ぐこともしません。これまでリリースしたウイスキーは9種類で、各回3本ずつのみ発売しています。
私たちが大切にしているのはあくまでも品質です。
瓶詰めする樽を慎重に選んでこそ、高い品質水準を維持することができると考えています。
Dear WHISKY:
なぜ品質が重要だとお考えですか?
オラさん:
ウイスキーの味わいや嗜好はあくまでも個人的な好みであるため、私たちはすべての人々の意見を尊重したいと考えています。また、私たちは最高のウイスキーを目指そうとはしていません。
高品質なウイスキーを瓶詰めするからといって、必ずしも世界最高のウイスキーである必要はないと思うからです。
Dear WHISKY:
どのようなウイスキーを目標にされているのでしょう?
オラさん:
私たちは、会話や意見が生まれるようなウイスキーをつくりたいと考えています。たとえ私たちのウイスキーが気に入ってもらえなかったとしても、感想を共有してくれたり、新しいウイスキーを試そうと思ってもらえれば、私たちのウイスキーは意義のある体験を生み出していると言えると思います。
Dear WHISKY:
瓶詰めする樽はどのように決めていますか?
オラさん:
ライアンと私がまず樽からウイスキーを試飲し、瓶詰めするかどうかを話し合います。その後、いくつかのバーやお店に持ち込み意見を聞いて、最終決定をします。
Dear WHISKY:
樽選びに基準はありますか?
オラさん:
基準は特にありません。美味しくて私たちのラインナップに合えば試してみてもいいと思っています。もちろん価格は重要です。採算を取るためには適切な価格帯でなければなりませんが、利益が見込めそうであれば柔軟に検討します。
Dear WHISKY:
どのような場合に瓶詰めをしないと決めるのですか?
オラさん:
これは人の好みの問題なので、瓶詰めしなかったウイスキーが悪いということはないです。
ただ、瓶詰めする際は、一風変わった味であるか、バランスのとれた味でなければならないと思っています。
そのどちらかに当てはまらないような味なら、その時には瓶詰めせず、もう少し時間を置いたり、別のものをつくり直したりしますね。
Dear WHISKY:
Tri Carraghがシングルカスク・ウイスキーしかリリースしないのはなぜですか?
オラさん:
それは私たちのキャリアが理由となっています。私たちはScotch Malt Whisky Societyで働き、シングルカスクの観点からウイスキーを学んだので、それ以外をしようとは考えませんでした。
そのため、Tri Carraghがこれまで力を注いできたのは、シングルカスクとシングルモルトです。
これらの魅力はユニークで特別で、限りのあるものという点です。ボトルを飲み終えた後に同じボトルがもう手に入らないと知った時はがっかりするかもしれませんが、それは他のカスクやボトルを試すいい機会になると思います。
Dear WHISKY:
着色やチル・フィルタリングに関してはどのように考えていますか?
オラさん:
私たちは着色したり、チル・フィルターをかけたりはしません。ウイスキーを最も自然な状態でお客様に届けたいので、ウイスキーには何も添加せず販売します。
Dear WHISKY:
シングルカスク・ウイスキーに特化するというのは、スコッチウイスキー業界では珍しいことなのでしょうか?
オラさん:
市場の大半はブレンデッドウイスキーが占めているため、シングルカスク・ウイスキーはまだ比較的珍しく少数です。しかし、そのユニークでニッチな特徴から、一種のカルトや同好会のような人気を集めていますね。
このことから、現在では多くのインディペンデント・ボトラーズがシングルカスクを販売し、より親しみやすくなるようなマーケティング戦略を行っています。
Dear WHISKY:
スコットランドではシングルカスク・ウイスキーはどのような存在として認識されていますか?
オラさん:
ウイスキーに詳しい人々の間では、プレミアム商品として楽しまれています。
しかし、繰り返しにはなりますがウイスキーは個人の好みですので、高いウイスキーが必ずしも良い製品であるとは限りません。
ブレンデッド・ウイスキーでも職人によってつくられた、素晴らしくバランスのとれた味わいの製品もあります。
Dear WHISKY:
最近リリースされたラインナップについて教えてください。
オラさん:
2023年9月に、「Lowland Distillery (Dalrymple)」、「Craigellachie Distillery」、「Secret Speyside Distillery」の3種類のシングルモルトを発売しました。これらは全てシェリー樽での熟成となっています。
Dear WHISKY:
樽の種類を増やすのではなく、3つともシェリー樽熟成にした理由は何かありますか?
オラさん:
それぞれのリリースのラインナップにある3つの樽には、特に計画やコンセプトはありません。
ただ単に、瓶詰めしたいと思える3つのシェリー樽に私たちが出会ったというのが理由ですね。
Dear WHISKY:
シングルモルト「Secret Speyside Distillery」について詳しく教えていただけますか?
オラさん:
私たちは蒸溜所名を公表していません。高いお金を払ってボトルを買うのに蒸溜所名がわからないことに違和感を感じる人もいると思います。これができるのは、2回のリリースを経て、お客様からTri Carraghの品質や樽選びを評価していただけているからですね。
Dear WHISKY:
Tri Carraghはどのように販路を拡大していますか?
オラさん:
私たちはまだ新しい会社ですので、SNSのような口コミを利用してきました。お客様に直接メールを送るのも有効な方法ですが、一番良いのはウイスキー・ショーに出展することだと思っています。今までは在庫が十分になかったため、これは取り掛かり始めたばかりです。
ブランドをもっと知ってもらうには、シングルカスクやシングルモルトに興味がある人が集まるウイスキーイベントが最適だと思います。
Dear WHISKY:
海外への販路拡大は考えていますか?
オラさん:
多くの国での販売も考えていますが、誰も私たちを知らなかった頃から支えてくれたイギリスのお店の方々を優先して考えたいです。彼らが必要とする数の在庫を途切れることなく準備し、関係を続けていきたいです。
英国内での販売とのバランスを考えながら、海外での販路拡大を目指していきます。
Dear WHISKY:
事業を展開する上で、一番気を付けていることは何ですか?
オラさん:
相手を大切にし、誠実に接することです。築き上げた信頼は、後々自分自身に返ってくるからです。私はウイスキー業界で働く人々をライバルだとは思っていません。
彼らは自分の仕事を日々楽しみながらこなし、お金を稼ごうとしているだけです。Tri Carraghと関わるそのような人々に対して、私はライバルではなく尊敬の気持ちを持っています。
Dear WHISKY:
Tri Carraghの設立以来、一番の試練は何でしたか?
オラさん:
1番の試練は、計画を立てることでした。パンデミック中に始めたため、瓶の価格や出荷量、人件費など全てが変化しており、ウイスキー販売に向けての計画を立てることができませんでした。
Dear WHISKY:
インディペンデント・ボトラーズを設立する上で難しい点はありましたか?
オラさん:
スコットランドには多くのインディペンデント・ボトラーズがあるため、USP(unique selling pointの頭文字より、独自の強みのこと)を考え、小売業者や流通業者といった人々と関係を築くのは大変なことでした。
Dear WHISKY:
Tri Carraghの強みはどのような点だと思いますか?
オラさん:
私たち2人で会社経営をしていることですね。
長年のキャリアと築き上げてきた人脈で、他のブランドと差をつけています。
Dear WHISKY:
ボトル発売に向けて、どのようにウイスキー関係者と関係を築きましたか?
オラさん:
自分の足でスコットランド中のバーを回りました。アバディーンからグラスゴー、ロンドンまで回り、ボトルを販売している人たちと個人的な関係を築きました。
Dear WHISKY:
Tri Carraghの次の目標は何でしょうか?
オラさん:
私たちは品質など理念として掲げていることに妥協せず、輸出量を増やすことを目標としています。シングルカスクやシングルモルトを愛する人々は海外にもいるので、輸出市場は重要ですし、輸出の基盤を築いていきたいと考えています。
しかし、私たちが重視しているのは品質ですので、品質が維持できないのなら、生産量を増やすつもりはありません。
Dear WHISKY:
これからチームを大きくする予定はありますか?
オラさん:
もちろんです!これまではライアンと私だけで会社を運営してきましたが、会社が成長してきたため、人の雇用が今の目標となっています。多くの顧客を抱えるのは喜ばしいことですが、お客様からの質問に答えたり、アドバイスをしたりできる人が不足しています。そこで、お客様へ丁寧に対応をするための担当者をつくりたいと考えています。
忙しくなったとしても、お客様第一の会社であり続けたいと思っていますね。
Dear WHISKY:
最後にDear WHISKY読者へメッセージをお願いできますか?
オラさん:
好みではないかもしれないウイスキーにも、ぜひ躊躇せず試してみてください!
Tri Carraghは日本でも発売しています。InstagramにTri Carraghの取扱店舗やボトルの入手方法を掲載していますので、フォローをしてぜひ私たちの活動をチェックしてくださいね!
スコッチウイスキーの基本となる原料の「水・大麦・酵母」にこだわり、上質なシングルカスク、シングルモルトをボトリングするTri Carragh。この記事では、スコッチウイスキー業界における長年のキャリアを持ち、ウイスキーやそのコミュニティへ情熱を持つTri Carraghの共同設立者、オラ・ロパトスカ氏への独占インタビューを紹介しました!
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