
シングルモルト余市とは? 味わいと限定品の種類、おすすめの飲み方
- ウイスキー銘柄
シングルモルト余市は、北海道の余市蒸溜所で製造されるニッカウヰスキーのノンエイジのシングルモルトです。
ヘビリーピーテッドモルトを用いていることが特徴であり、強いスモーキーさが特徴です。
蒸溜所が石狩湾に近い立地であることから、アイラウイスキーに近い潮の香りがウイスキーに付与されています。
2022年7月に10年の熟成表記のボトルが数量限定で再発売されるものの、基本的にはノンエイジ以外は終売しました。
この記事では、シングルモルト余市の味わいと限定品の種類、おすすめの飲み方を紹介します。
この記事のポイント
画像引用:https://www.asahibeer.co.jp/products/whisky_brandy/nikkamaltwhisky/yoichi/yoichi.html
概要 | 内容 |
容量 | 700ml |
アルコール度数 | 45% |
参考価格 | 7,000円 |
引用:アサヒビール 公式サイト
シングルモルト余市は、ニッカウヰスキーの北海道余市町にある余市蒸溜所で製造されるノンエイジのシングルモルトウイスキーです。
熟成年数が表記されているボトルに関しては終売しており、シングルモルト余市は熟成年数を表記していません。
終売した余市のシングルモルトがプレミア価格で取引されるなかで、シングルモルト余市は現行で販売されている最も入手しやすい銘柄です。
シングルモルト余市の歴史と概要、製造方法を見ていきましょう。
年代 | 出来事 |
1934年 | 竹鶴政孝氏が北海道余市町に「大日本果汁株式会社」(後のニッカウヰスキー)を設立 |
同年 | 同じ余市町に余市蒸溜所を設立 |
1989年 | ニッカウヰスキーから初めて「シングルモルト余市」が発売される |
2001年 | 「シングルカスク余市10年」がイギリスのウイスキーマガジン『ベスト・オブ・ザ・ベスト』で最高得点を獲得 |
2015年 | 熟成年数が表記されたシングルモルト余市が終売、年数表記のない「シングルモルト余市」が発売 |
2022年 | ラベルを一新し、「シングルモルト余市 10年」が限定発売 |
日本のウイスキーの父と称される竹鶴政孝氏は、スコットランドでウイスキー製造を学び、日本で本格的なウイスキーを作ることを目指しました。
1934年、竹鶴氏は北海道余市町に「大日本果汁株式会社」(後のニッカウヰスキー)を設立し、同年に余市蒸溜所を建設しています。
余市町は、スコットランドに似た冷涼な気候と豊富な水源に恵まれており、ウイスキー製造に適した環境であったことから選ばれました。
シングルモルト余市が初めて発売されたのは1989年のことであり、2001年には 「シングルカスク余市10年」がイギリスのウイスキーマガジン『ベスト・オブ・ザ・ベスト』で最高得点を獲得しました。
以降は余市を含むジャパニーズウイスキーが世界的に注目されるようになりますが、余市を取り巻く状況が大きく変化したのは2015年のことです。
需要過多の供給不足から原酒不足に陥り、熟成年数が表記されたシングルモルト余市(20年・15年・12年・10年)が終売しました。
代わりに熟成年数を表記しないノンエイジのシングルモルト余市が発売されるようになりました。
以降はノンエイジの限定品も販売しながら、熟成年数の表記されたボトルは一部のオンラインショップでプレミア価格で取引されることになります。
しかし、2022年、ラベルを一新した「シングルモルト余市 10年」が限定発売され、7年ぶりに熟成年数表記のシングルモルトが販売されています。
2015年以降、熟成年数が表記された余市の需要と価値は高い傾向にありますが、ノンエイジのシングルモルト余市であれば購入しやすいことから現在の入門酒といえるでしょう。
余市全体の種類と味わいはこちらの記事で紹介しています。
ウイスキー余市の特徴と種類!味わいを堪能するおすすめの飲み方は?
シングルモルト余市では、厳選された大麦が使用されており、ピート(泥炭)を燃やして発生する煙を利用して麦芽を乾燥させることで余市特有のスモーキーさを付与しています。
乾燥された麦芽を粉砕し、温水と混ぜ合わせることで麦汁(ワート)を抽出し、酵母を加えて発酵させます。
スコットランドに近い余市蒸溜所の冷涼な環境が発酵過程にも影響を与えて、本場のスコッチウイスキーを思わせる風味を生むのです。
余市はスコットランドの蒸溜所と同様の伝統的なポットスチルを使用し、石炭直火蒸溜法で蒸溜しています。
一般的には間接加熱が一般的ではありますが、余市は直火方式を採用していることが特徴です。
この製法により風味の成分が濃縮され、重厚感と深みのある味わいが生まれます。
蒸溜した原酒はオーク樽に詰められ、一定期間熟成されます。
石狩湾に近い立地であることから、海に近く気温や湿度の変動が激しい環境にあるため、アイラウイスキーを思わせる独特な潮気が加わるのです。
熟成を終えると樽から取り出されてブレンド・ボトル詰めがおこなわれて出荷されていくことになります。
最終的なブレンドや調整は、伝統的なレシピと現場の職人技により、余市ならではの味わいが仕上げられます。
余市蒸溜所の詳細は以下のページにまとめています。
シングルモルト余市はピーテッドモルトを使用していることから、スモーキーで力強い味わいが楽しめます。
薪や焦げた樹皮を思わせる独特なスモーキーさが広がり、磯の香りを思わせる潮気のあるフレーバーが感じられます。
熟成樽のバニラとほのかなスパイス感が加わり、ピートのアロマと調和して、バランスの取れた香りになっていることが特徴です。
最初に口に含んで感じるのはピート由来のスモーキーなインパクト、煙と土を思わせる独特な風味が鼻腔を通り抜けます。
豊かな麦芽の甘み、オーク樽のウッディな味わいが感じられ、フルーティーなニュアンスも感じられます。
そのため、重厚で厚みがありながら口あたりはまろやかなものとなっていることが魅力です。
スモーキーなピート香、熟成樽由来の香味がゆっくりとフェードアウトしていきます。
強いスモーク感、樽由来の甘み・スパイスのバランスが絶妙であり、深みのある複層的な味わいが魅力といえるでしょう。
シングルモルト余市には多数の限定品が存在するため、限定品の種類を紹介します。
画像引用:Amazon.co.jp
シングルモルト 余市 ピーティ&ソルティは、ニッカウヰスキーの余市蒸溜所限定で販売されているシングルモルトウイスキーです。
余市の特徴であるピート香と潮の香りを強調していることが特徴であり、スコットランドのアイラウイスキーを意識したボトルといえます。
潮の香りを伴う強烈なピート香、余市と比較するとアルコールの刺激による辛みと塩気が強く、甘さは控えめです。
余市蒸溜所限定のウイスキーは3種類販売されていますが、スモーキーなウイスキーが好きな方におすすめといえます。
画像引用:https://saketown.jp/products/8877700383007
シングルモルト 余市 ウッディ&バニラは、アメリカンオークの新樽で熟成された原酒を使用しています。
新樽で熟成された原酒はオーク由来の風味に影響を受けやすいことから、ウッディな香りとバニラの風味が強調されます。
バニラとオークの香りに、メロンとバナナのフルーティーさ、カカオを思わせるニュアンスがあり、豊かな印象です。
口に含んでもアメリカンオーク樽由来のバニラの甘みが強く、バーボン樽熟成のウイスキーが好きな方に向いているといえるでしょう。
画像引用:https://item.rakuten.co.jp/whiskyshop/single_2023-676_r509/
シングルモルト 余市 シェリー&スイートは、シェリー樽で熟成された原酒を使用する、余市蒸溜所限定ウイスキーのなかでも人気の高いボトルです。
シェリー特有の甘みが余市に付与されることから、通常の余市と比較してフルーティーさが強調された味わいになります。
熟したフルーツとバニラ、カカオの香りが広がり、杏と焼きリンゴの風味が特徴です。
もちろん、余市特有のスモーキーさは健在であり、ピート香と調和した複雑な風味が楽しめます。
シェリー樽熟成のウイスキーが好きな方におすすめの限定品といえるでしょう。
余市蒸溜所で購入できる限定ウイスキーを詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
余市蒸溜所限定ウイスキーとは?定価での購入方法と種類と味わいを紹介
画像引用:https://www.asahibeer.co.jp/news/2022/0325_1.html
シングルモルト余市 グランデは、免税店向けに販売されている限定の余市です。
余市の特徴的なヘビリーピーテッドモルト原酒の個性を際立たせるブレンドにしています。
モルトの香ばしさとほろ苦いピートが調和しており、厚みとコクのある味わいが特徴です。
画像引用:https://www.asahibeer.co.jp/news/2017/0914.html
シングルモルト余市 モスカテルウッドフィニッシュは、2017年に3,500本の数量限定で日本市場向けに販売された特別なウイスキーです。
余市のシングルモルトを、ポルトガル南部のセトゥーバル地区で栽培されたモスカテル種のブドウから作られる酒精強化ワインの樽で約1年間追加熟成させました。
レーズンの甘さと大麦の香ばしさ、口に含むと果実の豊かな風味とはちみつを思わせる甘いコク、余市特有のスモーキーさがあります。
画像引用:https://www.asahibeer.co.jp/news/2017/0914.html
シングルモルト余市 ラムウッドフィニッシュは、2017年11月に欧州および米国市場向けに各3,500本のみの限定生産されました。
日本では未発売であり、ラム樽の追熟によって、余市蒸溜所の伝統的なスモーキーさとモルトの風味に、ラム由来の甘みと複雑さが加わっています。
心地よいピートの薫香、モルトの香ばしさ、オレンジやビターチョコレートの風味が調和したまろやかな甘みがあります。
画像引用:https://www.asahibeer.co.jp/news/2020/0316.html
シングルモルト余市 アップルブランデーウッドフィニッシュは、2020年に6,700本限定で販売されました。
28年以上熟成されたアップルブランデー樽で約半年間、追加熟成させています。
りんごのコンポートのような芳香があり、焼き菓子を思わせる甘い味わいとほのかなピートスモークが魅力です。
画像引用:https://www.asahibeer.co.jp/news/2021/0721.html
シングルモルト余市 ノンピーテッドは、通常の余市とは異なり、ピート(泥炭)を使用せずに生産されていることが特徴です。
ニッカウヰスキーの別のシングルモルトの銘柄である宮城峡はノンピーテッドであることが特徴ではありますが、今回のリリースでは余市とは反対にピーテッドでリリースされています。
フルーティーで華やかなアロマが、スモーキーさがないためいつもよりクリアで軽やかな印象に感じられます。
ピートを使用しないことで、モルトの甘みやフルーツのニュアンスが際立ち、滑らかな口あたりです。
いつもと異なる味わいを求める方に魅力的なリリースであり、10,000本限定で販売されました。
画像引用:https://www.asahibeer.co.jp/news/2022/0830.html
シングルモルト余市 アロマティックイーストは、2022年に国内外合わせて10,000本の数量限定で販売されました。
発酵工程で使用する酵母の違いによる香りの変化に着目し、余市蒸溜所の原酒を特定のアロマティックイーストで発酵させています。
りんご、バナナなどのフルーティーな香り、モルトの甘みの奥にピート由来のコクとマーマレードのビターな余韻があります。
画像引用:https://www.asahibeer.co.jp/news/2022/0714_1.html
シングルモルト余市 10年は、復活した熟成年数が表記された余市であり、2022年には限定9,000本が販売されました。
熟したバナナを思わせる果実香、コクのある味わいとピートスモークが調和した味わいが魅力です。
シングルモルト余市のおすすめの飲み方を解説します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
シングルモルト余市は、ストレートでじっくりと味わうことで余市の特徴を味わうことができます。
余市本来のスモーキーさ、モルトの旨味、樽熟成由来の複雑なニュアンスがダイレクトに味わえることが魅力です。
少量で少しずつ余市の香りと味わいを味わってみましょう。
ストレートで美味しいウイスキーの条件はこちらの記事で紹介しています。
ストレートで美味しいウイスキーの条件とは?人気の銘柄・安い銘柄10選!
シングルモルト余市は熟成年数の若い原酒が使用されていることから、ロックでは氷の冷たさがアルコールの刺激を和らげ、口当たりがまろやかになります。
氷が溶けるにつれて風味が変化するため、余市の多層的な味わいの変遷を楽しめます。
ストレートでは飲みにくいと感じた場合は、ロックを試してみましょう。
ロックのおすすめの飲み方とおいしく飲むための作り方も紹介します。
ウイスキーのロックのおすすめの飲み方は? おいしく飲むための作り方もご紹介
シングルモルト余市は炭酸水で割ることで、重厚な風味が爽快な印象に変わり、飲みやすくなります。
ハイボールにしても余市の特徴であるスモーキーさを味わえるため、飲みやすくおすすめの飲み方といえるでしょう。
ウイスキーを飲み慣れていない場合は、ハイボールから試してみてください。
ハイボールに合う高級ウイスキーはこちらの記事で紹介しています。
良い評判 | 悪い評判 |
スモーキーな香りがいつまでも楽しめる | 価格高騰しすぎて手が出しにくくなった |
まろやかでありながらしっかりガツンと来る | 昔の方が良かった |
非常に味わい深い | - |
シングルモルト余市は、多くの人から味わいについて高く評価されていました。
余市のスモーキーな香りが好まれており、味の深さや飲みごたえが好評です。
ピートと甘さのバランスが良く、初心者も飲みやすいという意見もありました。
一方で、価格高騰の影響で飲みにくくなったという意見や、昔の余市と比較すると品質が下がったという意見も。
良い評判は主に味の深さや香り、飲みやすさに集中しているのに対して、悪い評判は主に価格や品質のばらつきに関するものです。
シングルモルト余市は、ニッカウヰスキーを代表するヘビリーピーテッドモルトによる強いスモーキーさ特徴のノンエイジウイスキーです。
2015年から熟成年数を表記したボトルが終売し、ノンエイジが中心のリリースとなりましたが、高く評価されています。
スタンダードなノンエイジボトル以外にも複数の限定品がリリースされているため、気になる方は購入を検討してみましょう。