【イベントレポート】ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)2024 授賞式
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2023年5月26日(金)~6月3日(土)にアイラ島の祭典“Fèis Ìle 2023”が開催されました!
日本ではアイラ・フェスティバルとして知られ、世界中からアイラ・ウイスキーのファンが集う一大イベントです。開催中は、アイラ島の9つの蒸溜所が日替わりでホストを務め、アイラ島の北東に位置するジュラ島のジュラ蒸溜所も参加しています。
イベントレポート第1弾では、2023年5月30日(火)に行われたラフロイグ オープン・デーとラガヴーリン蒸溜所の様子をお伝えしました。
第2弾である本記事では、翌日2023年5月31日(水)に行われたボウモア オープン・デー&アードナッホー オープン・デーと、ブルックラディ蒸溜所の訪問レポートをお届けします!
アイラウイスキーが造られる9つの蒸留所を一覧形式で紹介
アイラウイスキーの祭典!Fèis Ìle 2023とは?
Fèis Ìle 2023 フェスティバル記念ボトル
【イベントレポート】Fèis Ìle 2023<第1弾>ラフロイグ オープン・デー&ラガヴーリン蒸溜所
出典:https://feisile.co.uk/about/
1985年にゲール文化の復興を目的に始まったアイラ・フェスティバル。その後、1990年代に入ると世界でも有名なウイスキーイベントとして知られるようになりました。
きっかけとなったのは、1990年に開催されたウイスキーのテイスティングイベントが大変な好評を博したことです。その後、2000年頃には様々な蒸溜所がオープン・デーを実施し、フェスティバルの記念ボトルを販売するなど、アイラ・フェスティバルでの存在感を高めていきました。
今日では、アイラ・フェスティバルとウイスキーは切っても切り離せない存在となっています。世界中からウイスキーファンが集う、一大ウイスキーフェスティバルです!
日時 | 5月26日(金)~6月3日(土)全9日間 |
会場 | プログラムによって異なる |
料金 | 入場無料、特別イベントのみ有料 |
主催 | The Fèis Ìle |
公式サイト | https://feisile.co.uk/ |
SNS | Facebook: https://facebook.com/feisile.islay Instagram: https://instagram.com/feis.ile Twitter: https://twitter.com/feisile YouTube: https://www.youtube.com/channel/UC_oWtzW5yyCkMaeoYUQvF6w |
5月31日(水)は、ボウモア オープン・デーが開催されました!
蒸溜所名 | ボウモア(Bowmore) |
設立年 | 1779年 |
オーナー | ビームサントリー社 |
Dear WHISKY 紹介ページ |
ボウモアは潮風感じる島のウイスキー!種類とおいしい飲み方は? ボウモア蒸留所 - Bowmore DISTILLERY |
公式サイト | https://www.bowmore.com/ |
イベント | ボウモア オープン・デー |
日時 | 5月31日(水)10:00-17:00 |
会場 | ボウモア蒸溜所 |
チケット | 不要 |
備考 | 様々なテイスティングやウイスキー体験。生演奏は、スコットランドの伝統音楽のロック・ポップスカバー。ボウモア・バーもオープン。 |
アイラ島の中央部、インダール湾に面した海岸沿いに位置するボウモア蒸溜所。
この日は宿泊地からバスで移動しました。運転手さんに「ボウモア村へ」と行先を告げ、途中で羊に道を塞がれるなどのハプニングがありつつも、無事に目的地に到着しました。
フェスティバル期間中のアイラ島内での移動には、バスを頻繁に利用します。そのため、2日目となると、乗客の顔ぶれにも馴染みが出てきます。
イングランド、アメリカ、オランダ、中国など、国際色豊かなウイスキーファンが集まったバスでの会話は当然のことながら盛り上がり、どこかそわそわした温かな雰囲気に包まれていました。
バスで降り立った瞬間、ピートの香りが漂ってきます!
もくもくと白い煙がたっている一際大きな建物がボウモア蒸溜所です。
アイラ島の中心部「ボウモア村」の北端に位置するボウモア蒸溜所の建物群は、広大な敷地を有する他のアイラ島の蒸溜所に比べて、コンパクトな造りとなっています。現在でもフロアモルティングによる製麦を自社でかつ手作業で行っており、スコッチウイスキーの伝統的な製造方法を守り続けています。
まずは受付で運転の有無を答え、記念品が詰まったバッグを受け取ります。中には、ドラムグラスや、キーホルダー、マグネット、鉛筆などの小物類が詰まっています。
フェスティバルは、仮設のボウモア・バーを中心に屋台、ゲーム、生演奏など、大変賑わっていました!
ボウモア・バーでは、2種類のウイスキーが無料で提供されました。受付でもらったグラスを渡し、ボウモア12年と15年を注いでいただきました。
12年は、シャープでキリっとした印象。スモーキーでありながら、柑橘のような爽やかさも感じられました。
一方、15年は、もったりとしたフローラルな味わいで、しっかりとピートの香りが引き立っています。
どちらもバランスの取れた味わいで、飲み進めるたびに異なる味わいの層を発見することができます。前日にいただいたラフロイグと比較すると、ピートの風味もやや穏やかで、まるみのある味わいです。
第一貯蔵庫(The No. 1 Vaults)もありました!
ボウモア蒸溜所の第一貯蔵庫はスコットランドで最も古い熟成倉庫であり、海水面よりも低い「潮かぶり」の位置にあります。
選りすぐりのカスクだけが保管されており、熟成に最適な環境である、高い湿度、冷涼さ、暗さという要素を兼ね備えているそうです!
次に、昨年から気になっていたFèis Ìle 2022記念ボトル(15年)を試飲しました。バニラやハニーを感じさせるまろやかな風味と、カモミールのような心を癒す爽やかなアロマ、控えめながらも全体のバランスを支える磯の香りが特徴です。
最後に、Fèis Ìle 2023記念ボトル(18年)をいただきました。
オロロソとペドロ・ヒメネスの2種類のシェリーカスクを掛け合わせており、赤味を帯びた色合いが大変美しいです。
口に運んだ途端、一気に広がるフルーティな味わいと、レーズンのような温かく深い甘みが感じられます。
こちらも絶妙なバランスを持ち、何層にも重なる複雑な味わいと、柔らかなスモーク香がボウモアらしさを引き立てています。
すいすいと飲めてしまう一方、時間をかけて味が開いていく様子を楽しみながら、ゆっくりと味わいたい一杯でした。
せっかくの快晴のため、ボウモア蒸溜所が面する海岸でウイスキーをいただきました。
海は温かく澄んでおり、白く柔らかい砂浜に腰を下ろしました。すると、対岸からボートでフェスティバルにやってくる地元住民の姿が!
ボウモア オープン・デーは、アイラ島の生活を垣間見る貴重なイベントでした。
次は、同日開催していたアードナッホー オープン・デーの様子をお届けします!
蒸溜所名 | アードナッホー (Ardnahoe) |
設立年 | 2018年 |
オーナー | ハンターレイン社 |
Dear WHISKY 紹介ページ |
アードナッホー蒸留所 - Ardnahoe DISTILLERY |
公式サイト | https://ardnahoedistillery.com/ |
イベント | アードナッホー オープン・デー |
日時 | 5月31日(水)9:30-17:00 |
会場 | アードナッホー蒸溜所 |
チケット | 不要 特別チケットあり |
ボウモアからバスを乗り継ぎ、アイラ島北東部に位置するアードナッホー蒸溜所へと向かいます。
丘陵の間の小さな道を走ること約30分。ヒツジやハイランド牛、地殻変動によって草原の中にところどころ露出した大きな石群など、アイラ島の豊かな自然が眺められます。
ボウモア=アードナッホー間を直接結ぶバスはないため、Persabusで小型のシャトルバスに乗り換えました。
アードナッホー蒸溜所は、2018年に操業を開始した蒸溜所です。
他のアイラ蒸溜所とは全く雰囲気の異なるモダンな建物には、充実したビジターセンターやレストランなどが併設されています。
アードナッホー蒸溜所の対岸には、迫力あるジュラ島を眺めることができます。アイラ島=ジュラ島間にはフェリーが運航されており、日帰りでジュラ島を訪れることも可能です。
アードナッホー蒸溜所と言えば、写真右側の巨大なワームタブです!
アイラ島では唯一、スコットランド全土でもかなり珍しい伝統的なスタイルの、ワームタブコンデンサーを使用しています。
冷水のタブ(桶)の中には巨大な銅製のコイルがあり、蒸気がポットスチルのラインアームを通過した後、ゆっくりと徐々に凝縮されます。その結果、蒸気に質感と複雑さが加わり、ウイスキーの味わいが豊かになるそうです。
かつては多くの蒸溜所でこの手法が使われていましたが、蒸溜に時間がかかるため、現代では稀な技術となっています。
アードナッホー蒸溜所は、この非効率な手法の利点が最終的にはウイスキーの味として活かされるとの信念から、ワームタブを設置したそうです。
アードナッホー蒸溜所のショップには、オーナー会社であるハンターレイン社のウイスキーが並んでいます。
アードナッホー・シングルモルトはまだリリースされていないため、今回はアイラ産ウイスキーのブレンデッド「Islay Journey」カスクストレングスと「The Old Malt Cask」シリーズの中から蒸溜所限定のオーヘントッシャン10年を試飲しました!
Islay Journeyは、力強いスモークの中にミルクチョコレートのような甘みが引き立っています。少し塩味も感じられ、クリーミーな舌触りです。フィニッシュはドライで、どこか香ばしさが続きます。
少し加水をすると、角が取れてかなり飲みやすくなり、より複雑な味わいを楽しむことができました。
もう一つのオーヘントッシャン10年は、ワイン樽で熟成されています。
先ほどのIslay Journeyとは対照的に、フルーツ由来のフレッシュな甘みが特徴的です。その奥には少々スパイシーなカラメルやオークのニュアンスも感じられます。クセが少ないため、ウイスキーを飲み始めたばかりの方にもおすすめです!
晴天の海岸沿いでフェスティバルの生演奏を聴きながら味わうには、ぴったりの一杯でした!
次に、産地あてゲームに参加しました!
6つのウイスキーの香りを嗅ぎ、アイラ・ローランド・ハイランド・スぺイサイド・キャンベルタウン・アイランズのいずれかで生産されたものかを当てるものです。
他の参加者と話し合いながら、2回目のチャレンジで全問正解!景品としてオリジナルバッジをいただきました。
最後に、アードナッホー蒸溜所の第一貯蔵庫を見学しました!
奥ではテイスティングイベントも行われています。
ひんやりとした倉庫には、2018年に記念すべき初の樽詰めが行われたものを中心に、数多くの樽が並んでいました。それぞれの樽には番号とオーナーの名前が付されています。
「将来迎えに来ます!」といった、個人オーナーによる手書きのメッセージもありました。
アードナッホー・シングルモルトはまだリリースされていないため、オープン・デーは比較的小規模でした。
しかし、蒸溜所スタッフ、イベントスタッフ、さらには地域の小学生によるホスピタリティ溢れるサービスと、フレンドリーな雰囲気が広がっていました。
伝統的な製造手法とアイラ島唯一のワームタブコンデンサーを備えるアードナッホー蒸溜所。シングルモルトの販売が待ち遠しいです!
最後に、ブルックラディ蒸溜所を訪問しました!
蒸溜所名 | ブルックラディ (Bruichladdich) |
設立年 | 1881年 |
オーナー | レミーコアントロー社 |
Dear WHISKY 紹介ページ |
ブルックラディとは?種類や味わい、おすすめの飲み方 ブルックラディ蒸留所 - Bruichladdich DISTILLERY |
公式サイト | https://www.bruichladdich.com/ |
ブルックラディ オープン・デーは、5月28日(月)に既に終えていましたが(例年通り、大盛況だったそうです!)、ビジターセンターは通常通り開いていました。
ブルックラディ蒸溜所は、スコッチウイスキーにおいて初めて、ワインにおける「テロワール」の概念を導入したことで知られています。地産地消を重視し、アイラ産やスコットランド産の原料のみを使用したウイスキー造りに取り組んでいます。
ブルックラディ・ポートシャーロット・オクトモアの3つのブランドを異なるコンセプトで展開しています。
ブルックラディとは?種類や味わい、おすすめの飲み方 (cask-investment.com)
ポートシャーロットとは?種類や味わい、おすすめの飲み方 (cask-investment.com)
オクトモアとは? 種類と味わい、おすすめの飲み方を解説 | Dear WHISKY (cask-investment.com)
ブルックラディ蒸溜所の敷地に近づくと、アイコンカラーであるラディ・ブルーが見えてきました!
窓枠、ベンチ、ドアなどの至るところにラディ・ブルーが丁寧に塗られており、白い壁と青い海とのコントラストが際立っています。
ビジターセンターは、一転してカラフルで温かみのある雰囲気です。
カウンターでは、蒸溜所スタッフが、それぞれのボトルのコンセプト、特徴、ストーリーなどを訪問客に丁寧に説明していました。
Fèis Ìle 2023を記念して2023年5月28日(月)に発表された2本の記念ボトルを試飲しました!
まずは、ポップで可愛らしいパッケージのROCK’NDAAL 02.1です。
バーボンとソーテルヌワインの2種類の樽で熟成されており、大麦は完全トレース可能なオーガニックです。アイラ・シングルモルトとしては珍しくピートは一切使用されていないため、樽の風味がより強く感じられます。フローラルな香りとマンゴーのような熟した果実感が美味しく、パッケージの世界観とも完璧に調和した、不思議と明るい気持ちになれる一杯です。
次に、ポートシャーロットシリーズから出されたROCK’NDAAL 02.2をいただきました。
こちらはワイン樽とシェリー樽で熟成されており、濃厚なスモークとフルーティな味わいが絶妙なバランスで調和しています。ROCK’NDAAL 02.1と比べると飲みやすさは少なくなりますが、一度飲んだらクセになる、リッチで大人な味わいです。
出典:https://www.whiskybase.com/whiskies/whisky/99308/octomore-edition-084-masterclass-170-ppm
最後に、オクトモアシリーズから、オクトモア08.4をいただきました。
シックなパッケージが洗練された印象を与えています。こちらは、カウンターで隣に立っていた方が熱心に勧めて下さったもので、一口飲むと納得の美味しさ。バージンオークの個性が際立ち、シナモンのようなスパイシーさとキャラメルのようなもったりとした甘さが感じられました。また、とろりとしたテクスチャーも特徴的です。
伝統と革新の両面を持ち、独自のスタイルを確立したブルックラディ蒸溜所。
大盛り上がりのオープン・デーに訪れるも良し、通常のビジターセンターでゆっくりとスタッフの皆さんとの会話を楽しむのもまたおすすめです!
ぜひ足を運んでみて下さい!
以上、アイラ・フェスティバル2023のイベントレポート第2弾でした!蒸溜所スタッフ・イベントスタッフの皆さん、ありがとうございました!
最後に、アイラ島を訪れた日本人と言えば、作家の村上春樹氏が挙げられます。村上氏は、著書「もし僕らのことばがウイスキーであったなら」のあとがきにて、アイラ島への旅を振り返り、以下のように語っています。
でも経験的に言って、酒というのは、それがどんな酒であっても、その産地で飲むのがいちばんうまいような気がする。それが造られた場所に近ければ近いほどいい。(中略)よく言われるように、「うまい酒は旅をしない」のだ。輸送や気候の変化によって実際に味が変わってしまうということもあるだろう。あるいはまた、その酒が日常的な実感としてはぐくまれのまれている環境が失われることによって、そこにあるアロマが微妙に、多分に心理的に変質してしまうということもあるだろう。
村上春樹「もし僕らのことばがウイスキーであったなら」pp. 118-119
もちろん自宅やバーで飲むウイスキーも美味しいですが、実際にそのお酒が生まれた場所を訪れ、生産者のお話を聞きながら飲むウイスキーは、新たな体験と発見をもたらしてくれます。
アイラ・フェスティバルは、アイラ島の自然や文化、蒸溜所の魅力を一気に味わえる絶好の機会です!
ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか?
※アイラ・フェスティバルに訪れる際には、宿泊地とフェリーを早めに予約することをおすすめします。予約は1年前~数か月前に行うことが良いでしょう。また、特別チケットのご予約もお忘れなく!