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【独占インタビュー】<第2弾>レイクス蒸留所ウイスキーメーカー サラ・バージェスさん

2023.10.23 / 最終更新日:2023.11.25

壮大な自然と、それに長年寄り添って築き上げてきた歴史のある文化。その2つが共存することで有名な、イギリスの湖水地方にあるレイクス蒸留所は、蒸留所自体もまさにその文化が反映された、美しい石造りの建物を改装したものです。

そのような美しく歴史のあるレイクス蒸留所は、東京で行われたTWSC(東京ウイスキー&スピリッツコンペティション:世界各国のウイスキーを審査する、日本で唯一の品評会)にて、ベストディスティラリー賞というタイトルを受賞されました!
そこで今回は、マッカラン蒸溜所で活躍したのちにレイクス蒸留所のウイスキーメーカーとしてウイスキー造りに励むサラ・バージェスさんに、取材をさせていただきました!

全2弾構成となるうちの第2弾では、レイクス蒸留所のウイスキー造りの秘密やウイスキーコレクションについてなど、レイクス蒸留所について深掘りしたので、どうぞお楽しみください!

併せてお読みください!

レイクス蒸留所のウイスキー造り

レイクス蒸留所のウイスキー造り

Dear WHISKY:
ウイスキー造りを始めた当初の苦労は何がありましたか?

サラさん:
レイクス蒸留所では地元の人を多く雇うことに努めているのですが、そのスタッフたちにウイスキー造りのことや、蒸留所での働き方を教えるのが大変でした。
スコットランドなどで蒸溜所を造ると、蒸溜所で働いていた人をはじめとしてウイスキー造りを知っている人が多いです。レイクス蒸留所では、ウイスキー造りに携わったことの無い湖水地方北部の方々に仕事を提供したいという想いもあったため、ウイスキー造りを一から教える必要がありました。さらに、教えること自体の苦労だけではなく、誰が教えるのかということも問題となりました。

Dear WHISKY:
地元の方々と共に造る蒸留所特有の苦労もあったのですね。

サラさん:
そうですね。しかしこのこだわりによって、レイクス蒸留所と地元の方々との交流が盛んになったので、非常に良かったと思います!辛く大変ではありましたが、地元の方とレイクス蒸留所が繋がる素敵な場所が出来たと思います。

地元との深い関わりを持つレイクス蒸留所

Dear WHISKY:
他にも地域社会との関わりはあるのですか?

サラさん:
地元の人をたくさん蒸留所で雇うようにしています。UNESCOに登録されているThe English Lake District 「湖水地方」ですが、北部の地域には高い失業率があります。その地域に蒸留所を建設することで、ウイスキーの制作に直接関わる仕事だけではなく、蒸留所の廃棄物の運搬や蒸留所にある来訪者センターなどで働く仕事も含めて、たくさんの仕事の機会を作り、地元の人々の経済状況をサポートすることができます。
レイクス蒸留所は、ただの蒸溜所ではなく、レストランや来訪者センターなどもあるので、より多くの人を雇えるのです。
また、Water Charityというチャリティーもしていて、今までその地域に£45,000を募金しました。

湖水地方がウイスキーへ与える影響

Dear WHISKY:
湖水地方の環境はレイクス蒸留所のウイスキーにどのような影響を与えていますか??

サラさん:
熟成の過程に影響が出ています。レイクス蒸留所はスコットランドから約50キロほどの距離のため、気温が高くスコットランドよりも熟成が早く進みます。

Dear WHISKY:
熟成が通常のスコッチウイスキーよりも早いのですね!レイクス蒸留所は大体何年間熟成をさせるのを目安にしていますか?

サラさん:
レイクス蒸留所のウイスキーは全て、熟成年数を表記しない、Non-Age Statement (年数無表記)です。
何故かと言うと、「エレヴァージュ」という樽を途中で変える細かい熟成を行っているためです!これにより、レイクス蒸留所特有の味わいが生まれます。

イギリスならではのウイスキー造り

Dear WHISKY:
ちなみに、スコットランドの方が人を新しく蒸溜所に雇う面では簡単だと述べていましたが、なぜスコットランドではなくイギリスで造ろうと思ったのですか?

サラさん:
それはイギリスならではの製造方法の自由さにあります。実は、今イギリス内に蒸溜所が増えてきていて、現在49箇所の蒸溜所があります。私たちレイクス蒸留所はこの流れの初期のほうにできました。先駆者として、私たちは今他の蒸溜所と共に、何がイギリスのウイスキーなのかという認識を作り上げています。
レイクス蒸留所のウイスキーは、スコッチウイスキーの造り方に似せていますが、スコットランドで作るウイスキーにはたくさん規制があり、それに従わずに色々な造り方を試し、クリエイティビティを生かすことができます。それでも湖水地方はスコットランドにとても近いので似たような環境で作ることが出来ますしね。

Dear WHISKY:
その自由を手に入れた今、新しくレイクス蒸留所で挑戦したいことはありますか?

サラさん:
樽に使う木材に、色々な種類を使ってみたいと思っています。 スコットランドと違って、イギリスでは標準的なオーク以外の種類の木材を使うことができるので、私も様々な種類を試してみたいと思っています。南アメリカの、アムブラナという木材にも、とても興味があります。

Dear WHISKY:
エレヴァージュも非常に特徴的ですね!ちなみに他にもウイスキー造りのこだわりはありますか?

サラさん:
レイクス蒸留所には味の特徴に一貫性があります。ウイスキー造りでは、ウイスキーの造り手が思い描く風味や味わいと、蒸溜所としてのこだわりを考慮しなくてはなりません。
熟成工程では、樽に入れて何年もの月日を待つことで、ウイスキー特有の深みや味わいなどが樽から出ます。蒸溜所がこだわる味の特徴を守りさえすれば、私のようなウイスキーメーカーは創造的に、影響を調整して風味を工夫することができます。

レイクス蒸留所ならではのウイスキーの味

“The final whisky must say I Am The Lakes.(最終的に得られるウイスキーの味は、レイクス蒸留所のウイスキーであることを主張しなくてはいけない)”

Dear WHISKY:
“The final whisky must say I Am The Lakes.”というようなレイクス蒸留所ならではの味わいとはどのようなウイスキーですか?

サラさん:
レイクス蒸留所ではとても濃厚で重く、フルーティーで辛口な後味が特徴となっています。例えば、レイクス蒸留所ではノンピーテッドのウイスキーのみ造っていますが、そこで私がピートの効いたウイスキーを造り始めるとするなど、今までとは違う味わいを造ることにしても、この特徴さえ守っていれば、新しいウイスキーにもチャレンジできるのです!
また、レイクス蒸留所のもう一つ顕著な特徴は、色を加えたりせず、樽からついた色のまま自然な色を保っていることです。

新しい蒸留所ならではのエレヴァージュ

Dear WHISKY:
レイクス蒸留所の大きい特徴である、エレヴァージュという手法はどのようなものですか?

サラさん:
エレヴァージュとは、蒸溜中のウイスキーの味を頻繁に確認し、樽を変えることで、より良い味を生み出すことです。レイクス蒸留所では比較的小さい蒸留所で扱っている樽が少ないため、時間をかけてこだわることができます。
新しい蒸留所だからこそ、新しい取り組みを検討していく必要があります。だからこそ、エレヴァージュというウイスキーをより完璧にするための丁寧な工夫をすることにしましたエレヴァージュも、創設からのこだわりなので、これからもレイクス蒸留所の特徴として続けていきます。

Dear WHISKY:
サラさんご自身もエレヴァージュは初めてのご経験ですか?

サラさん:
初めての経験でした!カスクフィニッシュ(熟成が終わった原酒を別の樽に移して熟成させること)の経験はありますが、熟成中に他の樽に異動させるのは初めてです。レイクス蒸留所では、こだわり抜かれた限られた樽しかありません。そのためどの樽でどのような味わいになるのか想像し考えなくてはなりません。
だからこそ私たちは、熟成において一定の温度と一定の時間から得られる味も把握しています。このような熟成中の変化を理解し、自分の感性で調整することがウイスキーメーカーの仕事だと思っています。

Dear WHISKY:
こだわりの詰まった、そしてウイスキーメーカーならではのお仕事ですね!ちなみに、シェリーカスクを主に使っているのは何か理由があるのですか?

サラさん:
ポールさんとナイジェルさんがレイクス蒸留所当初から持っていたこだわりです。これからも必ずシェリーカスクを使い続けたいと思います!

レイクス蒸留所のウイスキーコレクション

世界から評価されるレイクス蒸留所のウイスキー

Dear WHISKY:
TWSC2023TOKYO WHISKY & SPIRITS COMPETITION)やISC2023International Spirits Challenge)などで素晴らしい賞の数々を受賞されていますが、率直にどのようなお気持ちですか?

サラさん:
ありがたいことに、TWSCではベストディスティラリー賞を、ISCでは金賞をいただきました。何より光栄だという気持ちでいっぱいです。まだ小さくて新しいレイクス蒸留所が、もっと多くの方に知ってもらえるきっかけとなったと思います。
これはやはり、エレヴァージュのような、私たちの独特なウイスキーの造り方が人々に受け入れてもらえたということでしょう。

The Whiskymaker’s Reserve No.7が私たちの手元に、、

Dear WHISKY:
レイクス蒸留所のウイスキーコレクションを、ウイスキーのイベントなどで出展する予定はありますか?

サラさん:
9月にあるロンドンのイベントで、The Whiskymaker’s Reserve No.7を出すつもりです。これはまだ売っていないウイスキーなので、そのイベントで公式にお客様へ発表するつもりです。このNo.7までは、私の前任者であるダバルガンジーさんがつくったものであり、私が造った新しいウイスキーは実は9月の終わりに発表する予定です!

毎年味を変える The Whiskymaker’s Reserve

Dear WHISKY:
なぜ The Whiskymaker’s Reserve は毎年味を変えているのですか?

サラさん:
毎年味を変えることによって、私たちのウイスキー造りが進歩するだけではなく、様々なお客様の声を聞きながら、どのような味を飲みたいのか考えることが出来ます。
小さい蒸留所ながら多くの愛飲者に支えられているので、レイクス蒸留所ではウイスキー造りにおいて、お客様の声は考慮していくべき大切な要素だと捉えています。

サラさんとthe Whiskymaker’s Reserve No.6

「変わらない味」のウイスキーコレクション

Dear WHISKY:
飲み手と共に造るのですね!ちなみに、The Whiskymaker’s Reserveの味はこれからも毎年変えていきますか?

サラさん:
これはまだどこにも話していない情報なのですが、わたしは変わらない味のウイスキーコレクションも作る予定で、今ちょうどその製作に努めています!
レイクス蒸留所のウイスキーはいくつかの賞をいただきました。そしてそれらを愛してくださっているからこそ、これまでの経験を繋げて一つのウイスキーを造りたいと考えました。試行錯誤しつつ皆様のお手元にお届けしたいのでしばしお待ち下さい!

造り手と飲み手のバランス

Dear WHISKY:
お客様のご意見とウイスキーメーカーとしての感性は、どのようにバランスを取っているのですか?

サラさん:
お客様の意見を100%聞いて造っても、クリエイティビティがないと思います。一方で、全く意見を聞かないのも、皆様が私たちのウイスキーを飲んで楽しむという良さがなくなってしまいますので、やはり丁度良いバランスが必要だと思います。
レイクス蒸留所は、比較的小さい蒸留所のため、お客様との距離もより近いです。だからこそ、お客様の声に真摯になれる素晴らしい環境だと思います。
私はずっとこのようなお客様の近くでウイスキーを造れる環境に行きたいと思っていました。だからこそ、今ここでお客様と共に、そして創造性をもって造るのが楽しくてしかたないです!

Dear WHISKY:
これからのレイクス蒸留所はどのようになっているかと思いますか?

サラさん:
私はこのままの小さい蒸留所ながらお客様と共に歩む蒸留所でありたいと思います。
土地的に大きくすると、ビジターセンターやレストランを無くす必要があります。その場所は地元の人やレイクス蒸留所を好きな方が訪れ、想い出を造っていく場所です。もし、そのような場所を無くしてしまえば、皆様にとって大切な居場所を奪ってしまうことになります。だからこそ、私たちはレイクス蒸留所を大切にするのはもちろんですが、地元の方々や訪れて下さる方々全てを大切に出来るような蒸留所を作っていきたいと考えています。

サラさんと今回受賞したベストディスティラリー賞

レイクス蒸留所と世界市場

ウイスキーの世界市場に精通している地方営業担当マネージャー、クレア・キーンさんにもお伺いしました!

レイクス蒸留所の知名度について

Dear WHISKY:
現在のレイクス蒸留所の知名度などについてはいかがですか?

サラさん:
世界的知名度に関しては、まだまだ成長しなくてはいけないと思います。業界の人たちには知っていただいていますが、一般の方々にはまだ全然知られていないと感じているので、これからもっと伸ばしていきたいと思います。 

クレアさん:
輸出し始めてからまだ18ヶ月しか経っておりませんが、今では既に20カ国以上で展開しています!これは、新しい形のウイスキーを求める方々が私たちに興味を持ってくれているということを示しています。わたしは、レイクス蒸留所はこの新しいカテゴリーのウイスキーを造っている流れの中で、品質と信頼性において先駆者になれていると思います。

これからの世界戦略とは

Dear WHISKY:
イクス蒸留所が世界により認知されるために何を行っていきたいと考えていますか?

サラさん:
アジアのように既にダークスピリッツを飲む文化がある地域をまず狙っています。ダークスピリッツとは、密閉された樽の中で熟成させることにより、茶色など、暗目の色がつく蒸溜酒のことを指します。そのような市場だと、ウイスキーが全く飲まれない地域と比べ、レイクス蒸留所のウイスキーを売り出すときに簡単なためです。

クレアさん:
私たちの対世界戦略はうまく行っていると思います。レイクス蒸留所では市場を細分化し、適切な時期に適切な顧客をターゲットできるようにすることを大切にしています。
正しいタイミングで正しい要素を取り入れることでレイクス蒸留所は成長すると思っているので、今は日本や台湾、アメリカなど、レイクス蒸留所の流通が伸びる可能性の高い戦略的な市場を選択しています。中東など、他の太平洋地域にももっと伸ばしていきたいと思っています。

Dear WHISKY:
これから世界のウイスキーマーケットはどのように変化していくと思われますか?

サラさん:
どんどん大きくなると思いますよ。世界中にウイスキーはもっと広がっていますからね。また、ハイボールにも注目しています。気温が高い地域だと、ピートが効いていたり重いウイスキーを飲みませんが、その点ハイボールなどは非常に流行すると感じます。ハイボールが流行することによって、ウイスキーも売れますから、その点でもウイスキー市場は大きくなると予測できます。

クレアさん:
流行によって変わると思いますが、需要の増加は確かにあると思います。数十年前でしたらここまでのウイスキー市場の成長は見込めませんでしたが、現在は驚くほど急速に成長しています!
例えばトラベルリテール、つまり旅行者を対象とした飛行機の機内販売などを見てみると、スコッチシングルモルトウイスキーは140億ドルほどの売り上げを出しており、次の9年間では倍増するように予測されています。これはウイスキービジネスにとって、追い風となります。
そして、缶のハイボールやフレーバーウイスキーなど新しい飲み方も流行してきていると思います。

Dear WHISKYの読者へのメッセージ

Dear WHISKY:
Dear WHISKYの読者に向けて、一言メッセージをお願いします!

サラさん:
何よりレイクス蒸留所について少しでも多くの方に知って欲しいです!きっかけは、今回のインタビューでもTWSCなどのイベントでも何でも構いません。そして、少しでも気になったら私たちのウイスキーを手にとって味わってください。そのウイスキーに私たちの想いが全て詰まっています。

最後に

以上が、レイクス蒸留所ウイスキーメーカー、サラ・バージェスさんへの独占インタビューでした!

レイクス蒸留所の魅力や特徴はもちろん、ウイスキー造りに長く携わってきたサラさんならではのレイクス蒸留所への想いをお伺いしました!

これから更なる成長と共に、注目を浴びてくるであろうレイクス蒸留所。皆さんも、ぜひレイクス蒸留所のウイスキーをお手に取り、その新しい味わいをお楽しみください!

併せてお読みください!

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