【独占インタビュー】ロバート・バーネカー、ソナト・バーネカー夫妻<第1弾> – KOVAL
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バーボンウイスキーというと、ケンタッキーやテネシーを思い浮かべる人が多いと思います。
KOVALはシカゴに建つ蒸溜所ですが、高品質のバーボンだけでなく、ミレット(キビ)、ライ麦、4種の穀物のミックスなど、数多くのユニークなウイスキーをつくっており、多くのウイスキー愛好家を驚かせています。
第1弾では、創設者であるロバートさん、ソナトさん夫妻による原料からボトリングまでこだわるウイスキーづくりをご紹介しました。第2弾では、大使館副報道官や大学教授というキャリアからウイスキーへ転職した背景や、ソナトさんのウイスキーとの出会いなどをお届けします!
なぜ安定したキャリアから全く違う人生に踏み出したのか?なぜウイスキーづくりを選んだのか?今までのキャリアは今のお仕事にどのように生かされているのか?この記事ではロバートさん、ソナトさんのキャリアに迫ります!
Dear WHISKY:
KOVALではどのような役割を担っていますか?
ロバートさん:
私たちは機器のメンテナンスから営業報告書の作成まで、あらゆることを行っています。私たちのような規模の会社の経営者は、全ての業務を把握しつつ、多くの役割をこなす必要があります。
ソナトさん:
最初の頃は、ロバートと私は文字通り何でもやっていました。会社が成長するにつれて、ロバートはウイスキー製造と財務に重点を置くようになり、私はマーケティングや販売を担当するようになりました。
私たちはKOVALという船の舵取りをしているので、KOVALに関わる全てに関わっています。
Dear WHISKY:
現在KOVALでは何名が働いていますか?
ロバートさん:
全体では63名が在籍しており、週末にテイスティングを主に行うパートタイムのテイスターもいます。私たちはアジアの一部の国、ヨーロッパのほぼ全域、米国、オーストラリアと、世界の55の市場で販売しているので、会社の運営はかなり大変ですね。
Dear WHISKY:
禁酒法以降、KOVALができるまで シカゴには蒸溜所がありませんでしたが、シカゴで始めるのに苦労はありましたか?
ロバートさん:
実際のところ、シカゴはビジネスに対して非常に協力的で、禁酒法以来初ということからの困難はありませんでした。
Dear WHISKY:
シカゴの文化はどのようなものですか?
ロバートさん:
シカゴは工業都市であり、製造業やクラフトのビジネス全般に門戸が開かれています。この文化が私たちが蒸溜所を始めるのに本当に助けになったと思います。
ソナトさん:
また、シカゴには独特の権力構造があり、ビジネスを始めたい場合はそれを理解することが重要ですね。
Dear WHISKY:
シカゴの権力構造と、それがビジネスに与える影響ついて詳しく教えていただけますか?
ソナトさん:
シカゴでは、市内の各区にいる市会議員が地域社会のリーダーのような働きをしています。彼らはミニ市長ようなもので、ビジネスには市会議員のサポートが重要です。
Dear WHISKY:
KOVALをオープンする際、市会議員とはどのように関わりましたか?
ソナトさん:
私たちが蒸溜所を始めようとしたとき、ウイスキーづくりに適していそうな地域の市会議員全員に手紙を送りました。そしてある市会議員から電話をもらい、「私の区にぜひ来てください!」とオファーをもらいました。驚きましたが、彼は蒸溜所をオープンするための良い場所を提供し、設立期間中も私たちをサポートしてくれました。
また私たちは、市会議員、上院議員、下院議員の協力を得て、アルコールに関わるビジネスに不利となっていた法律を改正しました!
Dear WHISKY:
法律ですか!今まではどのような法律がシカゴにありましたか?
ソナトさん:
アルコール業界が現地ツアーで試飲や小売を行うことを許可していなかったので、私たちはそのようなツアーを許可する法案を作成、提出しました。最終的に、これは禁酒法が終了して以来、初のクラフト蒸留業者のための法律となり、イリノイ州での蒸留酒の製造とマーケティングに革命をもたらしました。
シカゴでは、物事がどのように機能し、どこで助けが得られるのかを知っていれば、助けはすぐに見つかりますよ。
Dear WHISKY:
お二人とも非常にユニークなキャリアをお持ちですが、これまでのキャリアや経験はどのように役立っていますか?
ソナトさん:
私の現在の仕事の1つは、製品とそのストーリーについて「伝える」ことであり、これまでの教授としてのキャリアとよく似ています。
過去のどんな経験も、前に進もうとした時には、捨てられてしまうものではなく、役立つものだと信じています!
ロバートさん:
以前の仕事から、私は状況に素早く適応できるようになり、必要とされれば喜んで手伝ようになりました。これこそが起業するときに必要なことだと思いますし、今のKOVALに引き継がれていますね。
Dear WHISKY:
博士号を持っているということは、仕事にどのような影響がありますか?
ソナトさん:
間違いなくプラスの影響を与えています。蒸溜所を運営するには、調査力と組織力が非常に重要です。博士号を取る過程で身につけたこのスキルには助けられましたね。
ロバートさん:
大学では、問題を見つけて解決する過程を繰り返し学びました。この学術的なアプローチは、仕事でもかなり役に立ちました。
Dear WHISKY:
今の仕事に役立っている意外な経験はありますか?
ロバートさん:
コンピューターとプログラミングの知識ですね。私はKOVALですべてのデータベースと自動ロギングシステムを担当していて、これはKOVALの品質管理や、記録を保持するのに役立っています。
Dear WHISKY:
前回のインタビューでは、蒸溜所の新設を考える人々にウイスキー製造の知識を伝えるワークショップを開催したことについてお話いただきましたが、 なぜこのようなワークショップを始めたのですか?
ロバートさん:
2008年に蒸溜所を立ち上げた後、どうすれば蒸溜所を始められるかという問い合わせが何件かありました。最初は個別に対応していたのですが、私たちの知識や経験を求める人の数はどんどん増えていきました。そこで、ワークショップを開催することにしました。
Dear WHISKY:
どのようなコースを提供していましたか?
ロバートさん:
3日間と5日間のコースを提供していました。
2008年から現在に至るまで、3,800人以上がコースに参加し、200以上の世界の蒸溜所の設立に携わりました!
Dear WHISKY:
素晴らしいですね!どのあたりに建つ蒸溜所の設立に携わったのですか?
ロバートさん:
多くの蒸溜所は米国にありますが、ウガンダ、イスラエル、フィンランド、そして日本でも蒸溜所の設立を支援してきました。
Dear WHISKY:
日本のどの蒸溜所でしょうか?
ロバートさん:
吉田電材蒸留所や東京八王子蒸溜所と共に仕事をしてきました。KOVALの設備に興味を持っていただき、実際に現地へ行って設置をお手伝いさせていただきました。
Dear WHISKY:
蒸溜所を始めてから16年間で、米国のアルコール業界はどう変化しましたか?
ソナトさん:
この16年間で業界は大きく変化しました。私たちが創業した当時、米国には30未満の蒸溜所しかありませんでした。その多くは大規模なもので、クラフト蒸溜所は数個しかありませんでした。それ以来、米国では約4,000の蒸溜所が建設され、その多くはクラフト蒸溜所となっています。
つまり、米国の酒類業界に革命が起こったのです。
Dear WHISKY:
大手国際企業と比較して、クラフト蒸溜所の強みは何ですか?
ソナトさん:
小規模なクラフト蒸溜所では、より多様な種類の製品を製造できます。また、大きな象の場合、素早く方向転換するのは非常に困難ですが、小さなクラフト蒸溜所であれば、別の製品を作ると決めたら、すぐにそれを世に出すことができます。社内には官僚主義があまりないので、小規模から新製品を試すことができます。
Dear WHISKY:
パンデミックは米国のウイスキー業界にどのような影響を与えましたか?
ソナトさん:
パンデミックは、ビジネスのトレンドややり方の多くの側面に変化をもたらしました。パンデミック以前は、ネット販売や商品プロモーションなど、現在のような消費者マインドは定まっていませんでした。
また、多くの中堅企業が大手企業に買収されたため、現在の市場には非常に小さな企業と非常に大きな企業だけになっています。
Dear WHISKY:
このような変化についてどう思いますか?
ソナトさん:
私たちのような独立系クラフトブランドにとって、これは大きな挑戦です。
しかし、これは私たちがより創造的で、より強く、より革新的になれば乗り越えられる挑戦でもあります。物事が揺るがされるのは良いことです。なぜなら、それは私たちが革新的でより強くなる機会を生み出すからです。
Dear WHISKY:
市場競争におけるこうしたプレッシャーに対抗する鍵は何だと思いますか?
ソナトさん:
小規模であることには、大規模な企業よりも早く市場に適応できるなど、いくつかの利点があります。
また、自分が何者であり、自分の強みが何であるかを理解したら、問題ではなく解決策に注目して、自分の強みを生かすことに集中できます。
結局のところ、面白いもの、美しいもの、おいしいものを求める市場は必ず存在するので、誰かがそのニーズを満たす商品を市場にもたらす創造的な方法を見つける必要があるのです。
Dear WHISKY:
KOVALは、不安定で競争の激しい市場をどのように切り抜けていくのでしょうか?
ソナトさん:
私たちは常に革新し、アイデンティティと成功への道を構築しようとしています。私たちは他の人がやっていることを真似しようとはしません。
私たちが重視しているのは、他者との競争ではなく、自分自身との競争です。
だから私たちは他の誰よりも自分自身に対して厳しいのです。可能な限り最善を尽くしながら、楽しみつつ取り組むことを忘れません。
Dear WHISKY:
なぜ仕事の楽しさを重視するのでしょうか?
ソナトさん:
祝い事と一緒に楽しめるウイスキーを目指してつくっているので、ウイスキーづくりの過程も楽しくあるべきだと考えています!
Dear WHISKY:
ソナトさんとお酒との出会いについて教えてください!
ソナトさん:
初めてアルコールを飲んだ時のことを、苦い思い出という人もいます。
しかし、私にとってそれは祖母と一緒に旅行した思い出であり、「発見と祝いの時」でした。
Dear WHISKY:
「発見と祝いの時」とはどういう意味ですか?
ソナトさん:
祖母との旅行の中で、その土地特有のお酒に出会い、一緒にその思い出を祝いました。
私の経験は味覚を使って旅行するようなもので、場所によって異なる味、香り、味について学ぶのが大好きでした。
Dear WHISKY:
あなたがウイスキーをつくる立場になってから、お酒との関わりはどのように変わりましたか?
ソナトさん:
お酒をつくっている今では、パーティーに招待されることが多くなりましたね(笑)また、自分が何を飲んでいるのかを以前よりもずっとよく理解できるようになりました。
KOVALでの経験により、様々な蒸留酒、その製造方法、それぞれに個性を与える要素について、より総合的な理解を得ることができました。
Dear WHISKY:
ウイスキーのどの側面が一番好きですか?
ソナトさん:
発見と祝いの時と伴うことができる点はもちろん気に入っています。
さらに、私はウイスキーがポジティブでかつ直感的な方法で「瞬間を刻む」ことができるところが好きですね。
Dear WHISKY:
「瞬間を刻む」とはどういう意味ですか?
ソナトさん:
誰かに会い、素晴らしい会話をするときにウイスキーを飲みます。そして将来同じウイスキーを飲むと、会話やその時のことを思い出すでしょう。
ウイスキーはタイムカプセルのようなもので、その瞬間を刻む手助けをしてくれます。ただ時計を見るのとは一味違う、時間を刻む美しい方法だと思います。
Dear WHISKY:
KOVALの今後の抱負は何ですか?
ソナトさん:
様々なものからインスピレーションを得ることができるので、私たちは常に自分の好きなことをし続け、蒸留酒にそれらを取り入れたいと考えています。
常にある革新と発見を、KOVALを通じて世界と共有します。
私たちは製品をさらに革新し、もっとユニークで興味深いものをもたらしたいと考えています。
Dear WHISKY:
KOVALの拡大をどのように目指していますか?
ソナトさん:
最近、蒸溜所内を拡張しました。新しいテイスティングルームとバーを設け、パティオも拡張されました。これらをさらに活用していきたいと考えています。
また、世界の新たな市場への拡大も目指しています。KOVALは南アフリカに進出しましたので、他の新しい市場にも製品を販売していきたいと思います!
Dear WHISKY:
生産能力の拡大も目指していますか?
ソナトさん:
今年、3基目のスチルが導入されました!これで5,000リットルの蒸溜機が3基となり、また一歩前進しました。
Dear WHISKY:
最後に読者へメッセージをいただけますか?
ソナトさん:
皆さんがすべての幸せな瞬間を私たちの蒸留酒とともに刻み、健康、成功、イノベーションを祝う多くの年となることを願っています。
その貴重な瞬間に、私たちの製品やアイデアが立ち会えることはこの上ない喜びです。私たちはそのような瞬間のためにここにいます!
また、私たちは日本が大好きです。とても素晴らしい場所で、日本の文化や料理からたくさんのインスピレーションを得られると思います。 KOVALが私たちが日本に来て、様々なことを経験する機会をくれたことをとても嬉しく思います。また日本を訪れることができたら嬉しいです。また、皆様もシカゴへ遊びに来ていただければ幸いです。
ロバートさんとソナトさんは前職からキャリアを大きく転換し、KOVALを設立しました。
仕事の種類は異なりますが、彼らの知識とスキルは、米国最大のクラフト蒸溜所の1つであるKOVALに活かされています。
これからも世界中で多くの楽しい思い出やお祝いとともにあり続けるKOVALの今後にも注目です!